『スティーブズ』第1巻
松永肇一(作)うめ(画) 小学館 \610+税
(2014年11月28日発売)
このマンガは、Apple経営者であるスティーブ・ジョブズと、エンジニアのスティーブ・ウォズニアック、2人が主人公だ。
だから「ジョブズ」でも「スティーブ」でもなく、『スティーブズ』がタイトルでなければいけない。
物語は、2人のスティーブがガレージでコンピュータを組み、売りこもうとするところから始まる。
彼らはヒッピーのような格好で、とても「会社」の人間とは言えないような様相。
当時コンピューターは完成品を買うものではなく、パーツを集めて趣味人たちが組み立てるキットだった。そんななか、ウォズニアックは、極めて少ないパーツで、無限の可能性を産むコンピューターの回路を作り上げた。商品として売りだそう、コンピューターで世界を革命しよう、と考えたのがジョブズだ。
誰もがいいと思うものをつくり、正しいことをしようとするウォズ。多くの人の考え方を変えて、世界を正しくしようとするジョブズ。2人が組むことで、強力なパワーが湧き上がっていく。
汚い格好で売りこみにきたジョブズから、はじめての「Apple I」(未完成)を購入したコンピュータ専門店のポール・テレル。俺たちのために出資しろといってきたジョブズを、追い返さず話を聞いたドン・バレンタイン。説得に乗りこんできたジョブズに日本刀を突きつける、ジャック・トラミエル。
彼らひとりでも欠けたらAppleはなかっただろう。
この作品は彼らを、いい人・悪い人でわけない。登場人物全員が「すごい」からこそ、2人のスティーブとアップルが大きく成長したことを描いている。
そんな彼らをも圧倒する、ジョブズの「現実歪曲フィールド」とも呼ばれる、プレゼンテーションの描写は必見。
殺し合いにも似た投資の真剣勝負は、こちらまで威圧される迫力がある。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」