『放課後のプレアデス Prism Palette』第1巻
GAINAX(作) Anmi(画) 一迅社 \574+税
(2015年4月27日発売)
天体観測が大好きな少女・すばるはある日、謎の生物に遭遇。
追いかけた先で「魔法少女」の姿をした女の子4人を見つける。
話を聞くと、生物はプレアデス星の宇宙人だという。宇宙船が壊れてエンジンの部品があちこちに散らばったため、それを回収する協力者として、みこみある地球の少女を集めたらしい。
すばるもチームに参入し、星の形をしたエンジン部品を仲間とともに集めることに。ドジで気弱な性格につまずきつつも、少女は少しずつ成長していく……。
SFファンタジーアニメ『放課後のプレアデス』の公式コミカライズが、本作『放課後のプレアデス PrismPalette』だ。
アニメは本来、富士重工業の自動車ブランドであるスバルがプロモーションのために立ちあげた企画である。
制作を託されたGAINAXとの間で内容が練られ、象徴的にスバルの自動車開発の精神をあらわす方向でまとまった。だから直接に自動車を推して描くのではなく、車に関係するキーワードやガジェットをちりばめた世界観が構築されている。
アニメは2011年に1話4分割でYoutube配信されて一段落した後、数年越しで企画が再始動。今年の春にめでたくテレビシリーズがスタートした。
コミカライズ第1巻にはテレビ版第3話までの物語が収録。アニメ『ファンタジスタドール』のキャラクター原案者として知られるAnmiの繊細な描線が、少女のひたむきさをしみじみ表現している。
そのしみじみ感を支える要素が、すばるたち5人の少女が各々異なる平行世界から集められたという設定だ。
幼なじみの親友だが、同時に互いが自分の知る相手ではないすばるとあおいの、もどかしいすれ違い。さらに、空を飛ぶのがせいいっぱいでろくに魔法が扱えない魔法少女の「自分は他の平行世界の自分よりポンコツなのでは?」という不安。
平行世界というSF設定が、不完全で未完成な思春期の若者の存在自体とリンクしている。
すばるが悩む自分の不完全さは、しかし、裏返せば可能性の重ねあわせでもある。これから彼女が何者かになれるという、星の数ほどの可能性が放つ輝きの燃料だ。
ひいてはスバルが作り出す自動車の数々も、そういう可能性の輝きから生まれるのだというメッセージとしてうけとれる。
SF設定と、登場人物の心と、企業プロモーションのコンセプト……本作やアニメ本編にどこかメルヒェンチックな、寓話めいた上品さが漂うのはそれらのバランスがよくとれているからだろう。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7