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5月25日は主婦休みの日 『Papa told me ~窓に灯りのともる頃~』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/05/25


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『Papa told me ~窓に灯りのともる頃~』
榛野なな恵 集英社 \419+税


今日5月25日は「主婦休みの日」。1月、5月、9月の各25日、年に3回あるそうだ。
主婦がリフレッシュする日というのが第一義だが、さらに「夫や子どもが家事にチャレンジする日&パパと子どもが一緒に行動する日」なのだとか。

では、この記念日に――いや、記念日でなくても一緒に家事にチャレンジし、一緒に楽しく行動している素敵なパパと子どもをご紹介しよう。
娘の名前は的場知世(まとば・ちせ)、小学生。パパの名前は的場信吉(まとば・しんきち)、作家。
ママである千草は病弱で、知世が幼い頃に、主婦休みの“無期限の休暇”に入ってしまった。 それ以来、知世とパパはずっと、素敵な日常(ときに非日常)を2人で過ごしている。

たとえば本作品冒頭の「ガールズダイヤリー」では、知世が鼻をひくひくさせる場面から始まる。
「いい匂い。……でもこれは食べものじゃなくて きっとアイロンの匂い」
そして信吉はやっぱりアイロンをかけていて、知世にもアイロンがけの必要があるものがあったら持ってきなさい、と話す。
そんな信吉の写メを撮る知世。「アイロンかけてると超かっこいいんだよ」「新しい『著者近影』にどうかしら」
……文字だけで見るとかなりおしゃまな小学生だが、知世が言うととても自然で、知世自身の美意識のもとに発言しているのがよくわかる。
個性的で好奇心旺盛で聡明。日常のそこここに楽しみを見出して、日々を明るく過ごす。それが知世という女の子だ。

『Papa told me』は短編を連ねて構成された長いシリーズもので、的場父娘と、彼らの周囲にいる人々の心の動きが、あたたかな絵柄でていねいに描かれる。
たとえば「ナイトフライト」では、信吉の妹の百合子の不眠症を巡るファンタジックなエピソードが。
たとえば「マザーオブパール」では、知世の気に入っている雑貨店の、店長の葛藤と小さな思いやりが。

収録された11編のなかでも、出色の出来映えなのは「チョークダスト」だ。
ふとしたことから引きこもってしまった少年は、夜の公園で、地面をノートにチョークで文章を書く。
知世と公園を訪れた信吉はそれを読み、自分もまたチョークを手にする。
後日、少年は信吉の書いた文章を目にするのだが……。
これは何度読み返しても、信吉の少年へのメッセージで涙してしまう。
その人がかけてほしい言葉を、きちんと選べる信吉は、やはり優れた作家であり――また、優れた人の親なのだと思う。
そしてこのネームを作ることの出来る作者にも、深く感動する。

亡くなって何年経とうと、信吉は妻の千草を愛している。もちろん、娘の知世も。
そんな信吉は、知世にとっては理想の男性だ。
主婦のリフレッシュや父子の協力が「主婦休みの日」の定義だとしても、そのベースには家族がお互いに愛し合うという心が必要なのだろう。

知世と信吉は、それをみごとに体現してくれているのだ。



<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」

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