『群青戦記 グンジョーセンキ』第7巻
笠原真樹 集英社 \514+税
(2015年5月19日発売)
今、一番魅せてくれるマンガだ。
舞台となるのは、ある高校。スポーツの強豪校である滋賀県・星徳高校が、学校ごと戦国時代にタイムスリップ! そんななか、腕に覚えのある生徒たちが、みずからの体力と技術を活かして、戦国武将たちと戦うことになる……。
はたして、高校生とはいえ現代の卓越したアスリートと、戦国時代の猛者たちではどちらが強いのか。
そうしたバトルものとしてのおもしろさもあるが、本作は青春ものとしてもふるっている。
戦国時代にタイムスリップしたことで活躍することになるのは、アメフト部、野球部、卓球部、剣道部、弓道部などの俊英たち。それぞれの部員たちが背負ったドラマも読ませどころだ。
しかしスポーツ強豪校で活躍するような屈強な肉体を持てども、彼らはまだ10代。その強気と弱気が、物語に臨場感を与える。
またいわゆるスクールカーストが作品の下地に置かれていることも、ドラマをさらに盛り上げる要素にもなっている。弓道部ながら腕前は覚束ない、主人公の西野蒼が、歴史マニアとしての知識で仲間たちを救っていく様子には、思わず胸が熱くなる。
戦いの場における、それぞれが背負ったドラマと思いを描く手法は『テラフォーマーズ』(貴家悠・橘賢一)を、またタイムスリップした空間で子どもたちが生き抜くということでは『漂流教室』(楳図かずお)を、またそもそもの雛形としてはマンガ化も映像化もされている半村良の小説『戦国自衛隊』を思わせる。そのすべての要素が、新たな魅力となって結集されている作品だ。
また、新たな解釈と姿で描かれる武将たちも興味をひく。
豊臣秀吉軍と共闘して、松永久秀を成敗した星徳高校の面々。最新第7巻では、秀吉から茶会に招待されて、柴田勝家、丹羽長秀、徳川家康らと顔を合わせることになる。
歴史が変わりつつあるなか、死戦を通して結束を固めていく生徒たち。
いったいどんなラストが待っているのか、ますます目が離せない作品だ。
<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌『ぴあMovie Special 2015 Spring』が3月14に発売に。映画『暗殺教室』パンフも手掛けています。