『じゃりン子チエ』第1巻
はるき悦巳 双葉社 \571+税
7月22日は、「全国木製はきもの業組合連合会」が制定した「下駄の日」という記念日。
その由来は「七寸七分」など下駄の寸法を表すのによく「七」が使われることと、下駄の跡が「二二」に見えるから……という、語呂合わせのなかにも日本情緒があふれる記念日である。
最近では、残念ながら日常生活で下駄を見かける機会はめっきり減っているのが実情ではあるが、そのぶん「下駄を愛用」というだけでキャラが立つためか、マンガのなかでは“下駄キャラ”は意外なほど多いのである。
古くはその下駄の音が歌にもなっている『ゲゲゲの鬼太郎』の鬼太郎や、インパクトでいうならダントツかなと思われる『魁!! 男塾』の江田島平八塾長(やや意外なことに、『魁!! 男塾』で下駄を愛用しているのは塾長だけだったりする)などが、とくに有名ドコロだと思われるが、もうひとり、下駄キャラとして忘れることができないのが、『じゃりン子チエ』の主人公・竹本チエだろう。
小学5年生ながら大阪でホルモン屋「チエちゃん」を切り盛りし、バクチに明け暮れるどうしようもない父親のテツをやりこめつつ、強く生き抜くバイタリティあふれる少女である。
そして、多くの下駄キャラと同様に、戦うときは下駄が武器にもなるのもポイント(なのか?)ではあるが、マラソン大会ではなにかとチエにちょっかいを出してくる金持ちのボンボン・マサルに運動靴を隠されてしまい、下駄で出場する羽目になったことも忘れがたいエピソードである。
この話、あのテツがチエのために運動靴を買ってくるというのもじつに泣けるんですけどね……!
『じゃりン子チエ』は関西方面ではやたらとアニメの再放送をやっていることもあって、関西人ならほとんどだれでも知っている作品なのだが、そのつもりで関東の人に話をすると意外と通じなくて「あれ? なんでチエちゃんのこと知らんの?」となる……なんてこともあるのだとか。
たしかに大阪が舞台の作品ではありますが、内容はたぶん全人類に通用する人情物語なので、ぜひとももっともっと多くの人に読んでいただきたい。
いきなりマンガ原作全67巻(文庫版全47巻)は多いよ!という人には、あの高畑勲が監督の劇場版アニメ(そしてTVアニメ版も高畑氏がチーフディレクターを務めております)もありますので。今さらいうことでもありませんが、いずれの作品も超名作です!
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。