『帝一の國』第1巻
古屋兎丸 集英社 \438+税
1976年7月27日、俗に「ロッキード事件」と呼ばれる一連の汚職事件に関わった疑いによって、当時の前首相・田中角栄も含む多数の政治家が逮捕。
事件が明るみになった直後に関係者の不審死が相次ぐなど、今なお全貌が明らかにされているとは言いがたいこの事件は、戦後日本最大の疑獄事件として国民の注目を浴びることとなった。
この事件を教訓とし、金権に左右されない民主政治を目指す反省の日ということで、本日7月27日は「政治を考える日」に定められているのだ。
物語にサスペンスを生み出しやすい政治モノは、マンガのなかでも根強い人気を持つジャンルであり、原作・史村翔、作画・池上遼一『サンクチュアリ』や、原作・安童夕馬、漫画・朝基まさし『クニミツの政』など、様々な名作が存在している。
これらは、いわゆる政治家という職業を主軸にしている国政ドラマを描いたマンガなのだが、何も大規模な国政ばかりが「政治」ではない。
人が集まる場所であるならば、どこだろうと相応の政治力が働くものだ。
古屋兎丸『帝一の國』は、主人公・赤場帝一が名門校・海帝高校の生徒会長を目指してライバルたちと政治戦を繰り広げる作品であり、最近では『學蘭歌劇・帝一の國』として舞台化も果たした話題作。
学園内の生徒会長選挙戦といういささか小規模に思えるテーマながらも、様々な権謀術数を使ってみずからの勢力を拡大していく様は、ほかの政治マンガと比べても勝るとも劣らない迫力だ。
また、卑近な舞台設定であるからこそ、「自分とは関係ない現実離れしたファンタジー」としてではなく、「絶えず身近に存在している営み」としての政治が見えてくるだろう。
これこそまさに「政治を考える日」に読むにはうってつけの一本だ。
<文・一ノ瀬謹和>
涼しい部屋での読書を何よりも好む、もやし系ライター。マンガ以外では特撮ヒーロー関連の書籍で執筆することも。好きな怪獣戦艦はキングジョーグ。