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岡田あ~みん=カヒミ・カリィ!? 『DEATH NOTE』の作家は3人いた!? ……信じるか信じないかはあなたしだい! 闇深き(?)マンガ都市伝説【週刊「このマンガ」B級ニュース】

2015/08/26


先週公開された「このマンガがすごい!」9月ランキングは、もうご覧になっただろうか?
なかでも異彩を放っているのが、オンナ編7位の岡田あ~みん『新装版 ルナティック雑技団』だ。この作品の概要については日刊マンガガイドを参照してほしい。 が、作者の岡田あ~みんは、1983年の『お父さんは心配症』でブレイクしてから熱狂的なファンを生んだものの、1998年ごろから活動を休止。人気の絶頂期にパタリと姿を消したことから、さまざまな憶測を呼び、マンガファンのあいだではさまざまな“都市伝説”がささやかれてきた。
こうした“都市伝説”の類は、なるほど信ぴょう性を感じさせる逸話もあれば、無責任なホラ話も多い。

といったところで、今回は漫画家にまつわる“都市伝説”を見ていこう。

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『新装版 ルナティック雑技団』第1巻
岡田あ~みん 集英社 ¥600+税
(2015年7月24日発売)

まずは冒頭で紹介した岡田あ~みん。
死亡説や行方不明説など諸説あるが、いちばん「なんだこりゃ?」度の高い“都市伝説”といえば、「岡田あ~みん=カヒミ・カリィ同一人物説」だろう。
なんと岡田あ~みんは漫画家を辞めたのち、カヒミ・カリィの芸名で歌手デビューしたとする説だ。

この同一人物説のカギとなるのは、誰あろう、さくらももこである。というのも、岡田あ~みんとさくらももこは過去に合作(『ちびまる子ちゃん』2巻に収録)をしたことがあるほどの仲。そしてアニメ版『ちびまる子ちゃん』の主題歌「ハミングがきこえる」はカヒミ・カリィが歌っている。この2つのファクターを強引にこじつけた結果、この「同一人物説」が生まれたのではないだろうか。
岡田あ~みんもカヒミ・カリィも90年代サブカル・シーンではカリスマ的な存在だったから、ファン層が重複していたことは想像にかたくない。いわばファンの願望が育んだ“都市伝説”といえるだろう。

それにしても「岡田あ~みん=カヒミ・カリィ同一人物説」って! 
源義経が大陸に渡ってチンギス・ハーンになるようなもんじゃないか!


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『DEATH NOTE』第12巻
大場つぐみ(作) 小畑健(画)集英社 ¥390+税
(2006年7月4日発売)

『DEATH NOTE』や『バクマン。』の原作者・大場つぐみの正体についても、“都市伝説”がまことしやかにささやかれている。大場つぐみとは、かつて『とっても!ラッキーマン』を「週刊少年ジャンプ」でヒットさせた漫画家・ガモウひろしの変名であるとする説だ。テレビのバラエティ番組で取りあげられたこともあるので、ご存知の方も多いとは思う。
しかし、今回紹介したいのは、それではない。そのガモウひろしが、じつは2人組だった可能性があるとの説である。
その論拠となるのは、「週刊少年ジャンプ」1985年の1・2号(1月1日号)だ。


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この号では赤塚賞の結果が掲載されており、そこでガモウひろしは『根暗仮面』で佳作を受賞している。
東海林さだお、藤子不二雄、赤塚不二夫が選評を書いているのも趣深いのだが、受賞者のガモウひろしの年齢は(21歳)(22歳)と二重に表記されており、その下に(合作)と注釈がつけられているのだ。

つまり、赤塚賞受賞時点では、ガモウひろしは2人組だった公算が高い。『キン肉マン』のゆでたまご(原作:嶋田隆司、作画:中井義則)のように役割分担がされていたのか、あるいは『あさりちゃんの』室山まゆみ(室山眞弓・眞里子姉妹)のように共同作業なのか、はたまた藤子不二雄(藤子・F・不二雄=藤本弘、藤子不二雄A=安孫子素雄)のように名義だけ同じなのかは定かではない。
それに、デビュー以後にコンビを解消した可能性もある。なにしろ木多康昭『幕張』の主人公の正体がガモウひろしだったこともあるくらいだし、ガモウひろしという作家はなにかと逸話が多い人物である。

まあ、徳川家康にだって影武者がいた説があるくらいだから、ガモウひろしが2人いたって不思議ではない?

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『トキワ荘パワー!』
手塚治虫、赤塚不二夫、石ノ森章太郎、つのだじろう、藤子・F・不二雄、水野英子、
よこたとくお、いずみあすか、U.マイア(著) 水野英子、丸山昭(監) 祥伝社 ¥1,800+税
(2010年8月31日発売)

ほかにも巷間ささやかれることが多いのは、作者の性別に対する逸話だろうか。
少年誌で連載している作家は男性と思われやすく、のちに性別が判明したときに「えっ、あの人女性だったの?」と驚かれることが多い。
代表的なところでは、さとうふみや(『金田一少年の事件簿』作画担当)、大島司(『シュート!』)、荒川弘(『鋼の錬金術師』『銀の匙』など)といったところだろうか。

かつて少年マンガ雑誌では、作者が女性だとそれだけで作品が敬遠される傾向があった。 昨今ではその風潮は薄れてきているものの、あえて男性の名前や中性的なペンネームを使用するケースがあった点を忘れてはならない。

それとは反対に、男性作家が少女マンガを描くときに、女性っぽいペンネームを使った例もある。もっとも有名なのは、石ノ森章太郎と赤塚不二夫が合作するときに用いたペンネーム「いずみあすか」だろう。
なお、祥伝社から2010年に発行された『トキワ荘パワー!』には、いずみあすか名義の作品以外にも、石ノ森と赤塚が水野英子と3人で合作するときに用いた「U・マイヤ」名義の作品も掲載されている。
男性声優が女性向け作品のドラマCDに出演する際には変名を用いるケースがあるが、それも発想としては同じこと……かもしれない!?

かの有名な戦国大名・上杉謙信にも女性説が存在するのだから、「じつは男(女)?」説は、人気のある“都市伝説”なのだろう。


さて、ここまでマンガ界における“都市伝説”を、歴史上の異説・珍説と結びつけて紹介してきたが、つまりは現代の“都市伝説”も、昔からある逸話の類型にすぎないことが見えてきたはずだ。
“都市伝説”というものは、真実相当性よりも、人びとの「こうであってほしい」といった願望とか欲求がダイレクトに反映されているものなので、あくまで眉にツバしながら、謎は謎として楽しむのがいいのではないかと思う。


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『白泉社文庫 王狼伝』
武論尊(作) 三浦建太郎(画)白泉社 ¥619+税
(1998年3月発売)

ちなみに、これらの異説や珍説を取り入れたマンガ作品も存在する。
「源義経=チンギス・ハーン同一人物説」は、『王狼伝』(原作:武論尊、作画:三浦建太郎)だ。『北斗の拳』の武論尊と『ベルセルク』の三浦建太郎のコンビによる作品で、13世紀のモンゴルにタイムスリップした現代の歴史学者が主人公である。 そして「徳川家康、影武者と入れ替わり説」は『影武者徳川家康』(原作:隆慶一郎、作画:原哲夫)が有名だ。 2015年3月に創刊された小学館の新雑誌「ヒバナ」では、東村アキコが「上杉謙信女性説」を採用した『雪花の虎』を連載中。

やっぱりマンガは、なんでもアリなのだ。その懐の深さこそが、マンガのすごさではないだろうか。
異説だろうがナンだろうが飲みこんでしまうマンガのパワーと、“都市伝説”を柔軟に楽しめる読者のリテラシーの高さは、なかなか成熟度の高い文化じゃないでしょうか。




<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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