365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
さて、9月21日はファッションショーの日。本日読むべきマンガは……。
『朝日コミック文庫 ナチュラル』第1巻
麻生いずみ 朝日新聞出版 ¥740+税
9月21日は「ファッションショーの日」。1927(昭和2)年のこの日、日本で初めてのファッションショーが三越呉服店(現在の日本橋三越本店)で行われたことに由来する。
このファッションショーは館内の三越劇場のこけら落としとして企画されたイベント。洋装ではなく着物で、モデルたちはウォーキングならぬ日本舞踊でステージを舞ったのである。
それから約90年近くが経ち……ファッションショー、そしてモデルという職業はずいぶんと身近になったものである。
小学生やローティーン向けのファッションショーも盛んで、ファッション雑誌のモデルから芸能人に転身する例も多い今、幼い頃から雑誌の読者モデルを目指す女子は珍しくない。
『ナチュラル』の主人公・宮原直は、ファッションとはまるで無縁の地味女子だ。学年一の秀才で、おさげに黒縁眼鏡。演劇部に所属するものの、脚本担当で舞台に立ったことはない。
じつは、彼女は世界的なショーモデル・峰京子の娘である。直は仕事を選び、家族を捨てて出ていった母を憎んでいる。母を強く意識するあまりに“舞台”に立つことをかたくなに避けていたのだが、心の底ではスポットライトを浴びることに憧れを持っていた。
不意の代役としてステージに立ったとき、直はそれを悟る。そして、彼女を地味女子としか見ていなかった同級生たちも、長身の直のりりしい男役姿に、知られざる素質を見るのである。
「峰京子を超える存在になる」と心に誓い、モデルを目指す直のステップアップストーリー。
これまで勉強一筋のカタブツだった直が一流モデルになるべく努力していく過程には、山あり谷ありだ。個性豊かなライバルたちとのつばぜり合い、仕事を勝ち得るためのさまざまな難関にハラハラドキドキ……。
アニメ化もされた新体操マンガ『光の伝説』の作者としてもおなじみ、ストーリーテラー・麻生いずみの手腕が冴えわたる。
華やかなモデル業界を背景に、女性としての美学、人生観、家族愛などもたっぷり読みとれるドラマである。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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