365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月3日は奇術の日。本日読むべきマンガは……。
『ファンタストの恋愛』
松苗あけみ 集英社 ¥359+税
「はい、ワン・ツー・スリー!」
マジシャンのこんなかけ声とともに、何もないところから鳩が飛びたつ――そんなマジックをご覧になった人も多いのではないか。
12月3日はこのかけ声にちなんで「奇術の日」とされている。
1990年に、日本奇術協会が制定したとのこと。
『まじっく快斗』や『魔少年ビーティー』など、奇術を題材にしたマンガは数多いが、そのなかで今日は『ファンタストの恋愛』をご紹介したい。
ファンタストとは空想家、夢想家の意味を持つ。
作中に出てくるマジシャンであるルロイのモノローグによると、ファンタストとは夢にばかり恋をしているかわいそうな奴、らしい。
さて、その17歳の少年・ルロイの話をしよう。
彼は老舗ナイトクラブ「スライハンド」のオーナーである恋多き男デック・パイルの息子だ。
自分も得意のマジックで舞台に立たせてもらおうとデックのものに行くと、デックはちょうど若手芸人のオーディションのまっ最中だった。
人形のトップを相棒に、腹話術の芸を見せているボトム。
どう見ても小学生にしか見えないボトムだが、じつはその正体は……?
そしてデックも含めた、少々ややこしい恋愛関係がスタートする――。
作品の舞台はニューヨーク。
この街で活躍する登場人物だが、みな多かれ少なかれファンタストだ。
ルロイ、デック、ボトム……夢想家たちは恋をし、事件に巻きこまれ、コミカルかつ小粋な人生の物語を生きる。
つまり一番のファンタストかつマジシャンは、このストーリー世界を創りあげた著者その人だということだろう。
ポップで華やかな絵柄が、都会の夜によく似合う良作だ。
目くらましのたくさん用意された、しかしとても魅力的な恋愛模様を、どうぞ存分にお楽しみあれ。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」