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『漫画家探偵ひよこ』第2巻 反転邪郎 【日刊マンガガイド】

2015/12/27


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『漫画家探偵ひよこ』


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『漫画家探偵ひよこ』第2巻
反転邪郎(はんてん・しゃろう) KADOKAWA ¥600+税
(2015年11月21日発売)


『モコと歪んだ殺人鬼ども』『思春鬼のふたり』といった血なまぐさい作風の反転邪郎が、コミカルな筆致で描いたのが本作『漫画家探偵ひよこ』である。

原稿が次から次へとボツとなる19歳の新人漫画家・藤ノ森ひよこ。
そのひよこが、「16ページの読み切り」「読み切り16ページにカラー扉」といった雑誌の掲載枠を報酬にマンガ業界と関わる事件を解決していく――というのが本書の基本設定である。

ひよこのもとに事件を持ってくるのは、春川出版の雑誌「月刊少年ラック」での担当編集者・風間小太郎(ふうま・こたろう)である。
この風間が強烈なドSキャラで、ひよこのマンガに対して毒舌を吐きまくる。
美少女キャラが入浴しているサービスシーンを見ては、
「生首が浮いているだけにしか見えません」
と切り捨て、男性キャラが力を誇示して指を鳴らしている場面では、
「関節を鳴らしてますけど そのまま骨折れそうですよ」
と辛辣に宣告するのだ。

そう言われてもしかたがないようなできなので、ひよこはしゅんとなるわけだが、担当編集者なので欠点を克服するための助言もきちんと行う。 女性キャラが色っぽく描けるようにと、グラドルの撮影に立ち合わせたり、男性キャラを絶妙に描く漫画家のもとでアシスタントをやらせたりするのである(スポ根マンガの「特訓」みたいだ)。
ひよこも、それに応えて画力がずんずんと上昇していくのである。

本作は、探偵マンガであると同時に、藤ノ森ひよこの漫画家としての成長物語でもあるわけだ。
個人的には「特訓」の部分はすごく楽しめたので、さらにいくつものパターンを読みたかった。

マンガ家脅迫事件を解決したり(ひよこの鋭い観察眼が披露される)、師匠である比文現の殺人容疑を晴らすべく奔走したり(報酬は「連載枠」だ!)というところまでが第1巻。
第2巻には比文の事件の解決編などが掲載されている。

第2巻では、ひよこは探偵の仕事にも積極的になり、目を輝かせて
「風間さんっ 探偵依頼ありませんか!?」
と問いかけるまでになる。
掲載枠欲しさに探偵業をやっていたのが「マンガ業界でがんばる人たちの助け」になりたい、という思いに突き動かされたわけだ。
このような人間的な成長に加えて、漫画家としての実力もアップして、ついに風間を納得させるマンガを描き上げるまでになる。

成長ぶりを象徴的に示しているのが、コミックスの各巻の表紙絵だろう。
第1巻ではホームズのコスプレみたいな格好をして、あわあわしていたひよこが、第2巻の表紙では別人のようにきりっとした表情でペンを持っているのだ。

『漫画家探偵ひよこ』は、11月発売のこの第2巻で完結。
手頃な分量なので、ぜひこの機会に手にとって、ひよこが素直に伸びていくさまを楽しんでほしい。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「名探偵コナンMOOK 探偵女子」(小学館)にコラムを執筆。現在発売中の「ミステリマガジン」2016年1月号(早川書房)にミステリコミックレビューが掲載。同じく現在発売中の「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)にてミステリコミックの年間総括記事等を担当。

単行本情報

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