365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
12月30日はウェイクフィールドの戦いが起こった日。本日読むべきマンガは……。
『薔薇王の葬列』第1巻
菅野文 秋田書店 ¥429+税
1460年12月30日、英国ウェスト・ヨークシャーのウェイクフィールドにて、「薔薇戦争」における主要な戦闘のひとつが生起した。
そもそも薔薇戦争は英国の王位継承権をめぐって諸侯・ヨーク家とランカスター家が権力闘争を繰り広げた大規模な内戦だ。
ランカスター家が赤薔薇、ヨーク家が白薔薇を記章としていたのでこんな優雅な名前をつけられているが、実際には30年もの長きにわたる血みどろの戦いだったわけで、かのウィリアム・シェイクスピアも『ヘンリー6世』『リチャード3世』というこれを題材にした壮大な歴史劇を残したのもむべなるかな、である。
そのリチャード3世に人気漫画家・菅野文による大胆な解釈を加えて、一種のピカレスクヒーローにすえた作品が『薔薇王の葬列』だ。
ヨーク公リチャードとその妻・セシリーの間に生まれた子は、父と同じ「リチャード」の名を与えられながら男でも女でもない性を得たため、母から“悪魔の子”と忌み嫌われる。
鬱屈した想いを抱えて成長したリチャードは、せめて敬愛する父が王位に就けるよう武芸を磨き、一刻も早く戦線に加わりたいと願う。っそして、ヨーク公リチャードは、兄のエドワードをともなってランカスター家に戦いを挑んだ。
一度はロンドンを制圧し、ランカスター家の当主ヘンリー6世を捕らえて王位を手にしたヨーク公リチャードだったが、ウェールズに逃れたヘンリー6世の妻・マーガレット王妃と息子・エドワード(ヨーク家のエドワードとは別人!)が自軍の4倍の軍勢を整えて反撃。
我が子・リチャードに不退転の決意を語った父・リチャードは、マーガレット王妃の軍を迎え撃つべく野戦に臨むが……というところで第1巻は終わる。
この「野戦」の地が先に述べたウェイクフィールドで、その結果については第2巻の冒頭で述べられているので、ここはぜひとも読んでいただきたいところ。
主要人物に同名人物がいたり、一見するととっつきにくそうなマンガだが、ヒリつくような主人公・リチャードの表情を見ているだけで自然と周囲の人間関係まで理解できるようになってくるのが不思議だ。
世界史が苦手な人でもきっと楽しめるので、冬休みにコミックスを追ってみてはいかがだろうか。
<文・富士見大>
編集・ライター。『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、『月刊ヒーローズ』(ヒーローズ)ほかに参加する。『別冊宝島2394 仮面ライダー』や「仮面ライダードライブ公式完全読本」もやってます。