日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『声優ましまし倶楽部』
『声優ましまし倶楽部』第2巻
目黒ひばり(作) 小林尽(画) 集英社 ¥500+税
(2015年12月4日発売)
真島いろはるは、アイドル声優を目指す女の子。
見た目はそこそこかわいい。売れるためならなんでもやります。
トップ目指してがんばります!
……というサクセスストーリーを期待して読み始めたら、ゲッソリするマンガ。
「声優」という語から生まれる、あらゆる悪いイメージを全部盛りこんでいる。
女性声優同士の足の引っぱりあい。ネットでの面倒ごと。業界でのコネづくりのトラブル。
人気のない生放送の汚れ仕事。まとめブログでの拡散。ヤリチン声優にストーカーAD。
ネットスラングの「女性声優は処女膜から声を出す」なんていう話題まで登場。いやいやそれ書いちゃだめでしょ!
あまりに胃が痛くなる人間関係のなか、自分のことが大好きないろはるは、図太く生き抜きぬこうとしている。
自分のことを持ちあげてくれる人やコネを持ってそうな人にはヘコヘコする。
彼らが自分をつないでくれないと知るやいなや、すぐに切りすてて脳内で唾棄しまくるといったありさま。
周囲の人物はたしかにひどい人間が多い。あからさまにいろはるをいじめようとする人間もいる。
1巻に登場する、勝手に彼氏面するAD・片山の描写は、正直笑えないくらい。
それ以上にいろはるの言動が自分勝手。
「あははっブスばっかりじゃん!!これ私だったら余裕でトップだよう」。
この作品のキモは、コミュニケーション不全だ。
2巻ではいろはるが、雑誌関係者の飲み会に参加するシーンがある。ところが彼女、テンションの高いノリについていけない。しかも自分が笑いのネタにされると、一気に萎縮してしまう。
「みんなと話せなかった高校生の頃に戻ったみたいだよう……」
彼女がひどいことを吐きまくるのは、虚勢をはっているからだ。小さな事件一つひとつが、彼女の心を蝕み続ける。
実際はネガティブな彼女、気にしなくていいことも、傷になって蓄積している。
笑えない出来事の多いギャグマンガ。
しかしいろはるの弱さが理解できると、一気に「笑っていこうよ」という気持ちになれる。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」