日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『蝉丸残日録』
『蝉丸残日録』第2巻
ツナミノユウ 講談社 ¥560+税
(2016年4月22日発売)
ある日、目が覚めたら顔が蝉になっていた!
そんなカフカっぽい幕開けの本作の主人公、その名も蝉丸氏はハタと思い当たる。蝉ということは、もしやあと1週間の命なのでは!?
幸か不幸か身体は人間なので、ふつうに出社してみると、これまで厳しい顔しか見せたことのない年下の女性上司・蜂須賀さんでさえ当たりがやわらかい。
理解ある(?)同僚たちに囲まれながら蝉リーマンとして過ごす蝉丸は、死を意識するや突然のキャラ変を見せる。
一人称は俺から僕に変わり、何やらニヒルなことをつぶやいたり、イイ感じの名言を残すことにエネルギーをかけたり(笑)。
死を覚悟した人間は何を思うのか。アンタッチャブルな領域をスレスレの笑いに料理しつつ、この完結巻では意外やマジな展開が。
1週間どころか1カ月をとうに過ぎても結局死ぬことはなくこのままいくのかと思われた頃、蝉丸の身体に異変が!
クドいようだが本当に意外にも、ラストは感動の結末が待つ。
ちょっとした変化(でもないか)で、これまでの人間関係や風景が一変して見えるのだと、本作は教えてくれる。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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