日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『微熱空間』
『微熱空間』第1巻
蒼樹うめ 白泉社 ¥880+税
(2016年4月28日発売)
親の再婚で突然家族になった中ノ瀬亜麻音(なかのせ・あまね)と赤瀬川直耶(あかせがわ・なおや)。便宜上姉と弟、ということになっているが、じつは同学年、それどころか誕生日も3日違い。
どう接すればいいのかわからず、ぎこちない日々が続く。
性的な視点はどうしても入る。思春期だもの。
けれど2人は、前提として「どう姉と弟の関係になるか」を模索しているのがいい。
2人とも親のことが大好き。だからできるだけ「家族」を保とうとしている。
お互いそっぽを向くのではなく、自然体で仲よくするための方法を考えている。
亜麻音はいっしょに家から出るところを見られたら困るから、と直耶に1分待ってから登校するように言う。一方で、家のなかでは姉弟らしくあるために、直耶を「直くん」と呼ぶ練習を繰りかえす。
直耶は亜麻音に対して「女性」の意識がどんどん高まる。「直くん」と呼ばれて顔を真っ赤にしてしまう。亜麻音といる時間が苦手になって、朝早く出かけて夜遅く帰るようになった。
亜麻音の父親(直耶の義父)が夜、直耶の部屋を訪ねるシーンがある。「出来る限り大事に育ててきた娘なんだ 亜麻音の良い弟になってほしい よろしく頼むよ!」
ちょっとした嫌味のない釘刺し。
お義父さん、お言葉ですがそう簡単には慣れないです。
ムズムズなストーリーのなか、亜麻音のことが好きな友人・九条郁乃(くじょういくの)の存在は、ピリッと辛味が効いている。
郁乃は直耶に嫉妬し、亜麻音に軽いキスをした。あなたにはこんなことできる積み重ね、ないでしょう?と。
だからこそ、自分が「女」であること、直耶が男であること、そして自分が恋愛していることを再認識してしまい、傷つく。
性別ってなんでこんなに面倒なのか。
「私たち 今 姉弟っぽいかなぁ」「どうだろうなー…」
手を繋いだ時感じるのは、家族愛なのか恋愛なのか。2人にはまだわからない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」