365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月4日は虫歯予防デーだった日。本日読むべきマンガは……。
『ほたる ~真夜中の歯科医~』第1巻
高田靖彦 日本文芸社 ¥590+税
6月4日は「(旧)虫歯予防デー」。
6(む)・4(し)の語呂合わせから、1928年~1938年の間、日本歯科医師会が実施していた記念日で、1958年からは6月4日~10日までを「歯の衛生週間」としている。
じゃあ、1939年~1957年は虫歯に対してノーガードだったのか!? というと、いろいろと変遷があったらしい。
1939年~1941年までは「護歯日」(これは「ゴシビ」と読むのだろうか? 「ゴバビ」だとなんか音が怖い)。1942年には「健民ムシ歯予防運動」とされていた。
1943年から1947年までは太平洋戦争が激化したために中止。
しかし終戦から4年後の1949年、これを復活させる形で「口腔衛生週間」が制定され、1952年には「口腔衛生強調運動」というイカめしい名前に変わり、1956年に再び「口腔衛生週間」へと名称を変更し、1958年から2012年まで「歯の衛生週間」、そして2013年からは「歯と口の健康週間」になっている。
その目的は、
“歯と口の健康に関する正しい知識を国民に対して普及啓発するとともに、歯科疾患の予防に関する適切な習慣の定着を図り、併せてその早期発見及び早期治療を徹底することにより歯の寿命を延ばし、国民の健康の保持増進に寄与することを目的としている”
のだそう(以上、日本歯科医師会サイトから引用。なげー)。
医者を主人公にしたドラマやマンガは数多いが、歯科医のマンガはなぜか極端に数が少ない。
年齢や性別を問わずだれの身にも起こりうる、身近で切実な問題なのに、あまりに問題が個人的すぎるためにドラマチックではないと切り捨てられてしまうのだろうか。たしかに歯痛はどんなに痛くてもすぐに死ぬわけではなく、伝染病のような強い感染力を持っているわけでもない。
けれど、個人的な問題だからこそ寄り添ってくれる医者が欲しいのではないだろうか。それも、できれば一刻も早く。
そんな数少ない歯科医を題材としたマンガの代表が、6月4日にご紹介する「ほたる ~真夜中の歯科医~」だ。
夜間診療専門の歯科医・保田留脩(ほたどめ・おさむ)は、歯科医としての腕は高いが、口が悪くて不愛想な偏屈者。
日中は妹のふみよ、夜間は兄の脩が切り盛りする「ほたる歯科医院」を、生活環境も年齢も異なる様々な患者が訪れる。
事前の説明はあるものの治療中に何をされているのかを見ることができないのも歯の治療が怖い理由のひとつ。「他人ごと」として描かれる作中の治療の様子を見ていると、そんな恐怖感もいくぶんやわらいでくる気もする。
原因も経緯も人それぞれの歯痛。患者の苦しみに寄り添うことで、保田留家の居間に飾られた色紙「歯の痛みは 暮らしの痛み」という言葉が実感できる。
日常生活を送れる幸せを健康な歯で噛みしめながら『ほたる ~真夜中の歯科医~』を読もう!
<文・秋山哲茂>
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』(小学館)、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進!』(徳間書店)など。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士(見習い)。