365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
6月11日は傘の日。本日読むべきマンガは……。
『MASTERキートン 完全版』第5巻
勝鹿北星、長崎尚志(脚) 浦沢直樹(画) 小学館 ¥1,238+税
本日6月11日は、1989年より日本洋傘振興協議会(JUPA)によって「傘の日」と定められている。
理由は、この日が梅雨の入口となる暦上の「入梅」になりやすいことからだ。これからの季節、みんな嫌でも傘なしでは出かけられなくなってくる……ということで、今回は思わぬ機能を持つ傘が印象的な『MASTERキートン』の1エピソード「匂いの鍵」を紹介したい。
元英国SAS(特殊空挺部隊)の隊員であり、考古学者を目指しつつ保険の調査員(オプ)をしている平賀=キートン・太一。
本エピソードで彼のもとにきたのは、ハイネン老人の「死の匂いが感じられなかったのに急死した友人・シーデルの死因を調査して欲しい」という依頼だ。
その人のよさもあって依頼人に振りまわされがちなキートンだが、今回もその例に漏れず苦戦することに。
だが、死んだシーデルから桃のような香りがしたという証言と、傘をさした男が現場近くにいたという情報から、犯人像を突き止めていく。
そして、シーデルは傘型のガス銃によって暗殺されていたことが明らかになるのだが、青酸ガスから発せられる桃の香りと、劇中で頻出する「匂い」をひっかけているのが憎い!
ベルリンの壁崩壊後も冷戦に縛られ続けている東ドイツ人の老人を、情感たっぷりに描いた本エピソードは、せつないラストも必見。
『MASTERキートン』では、老いてなおそこらの若者以上にハツラツとしている者から、渋く枯れている者まで様々な老人の姿が描かれているのだが、本エピソードはそんな老人回のなかでもかなりグッと来るもののひとつであることにも注目だ。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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