日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『アッガイ博士』
『アッガイ博士』第2巻
曽野由大(著) 矢立肇/富野由悠季(案) KADOKAWA ¥580+税
(2016年5月21日発売)
関連コミカライズ作品が無数にある『機動戦士ガンダム』といえど、アニメ本編ではたった1話しか登場していないアッガイがメインのマンガが描かれ、単行本が2冊も出るとはだれが予想したであろうか? しかし、もともと愛され系モビルスーツであるアッガイが、この作品を読めばますます好きになることは間違いない。たぶん。
しかし、本作と同じ著者である曽野由大が手がけた、アッガイがヒーロー化して戦う『アイアンアッガイ』(なにがどうすればそんな事態になるのかは、「このマンガがすごい!WEB」の過去レビューを参照していただきたい)に比べれば、本作は実のところ極めて正統派のモビルスーツマンガである。たしかに若干コメディタッチのキャラ造形や演出は含まれるものの、モビルスーツ開発の描写に関しては完全にガチ。なんとなく、本作を一発ネタの出落ち系のマンガだと勘違いしている人がいるならば、まったくそんなことないですよ! と声を大にしてお伝えしておきたい。
そもそもこの『アッガイ博士』は、アッガイを“萌えキャラ”などとして扱っておらず、むしろバッキバキにカッコいい兵器として描いているのである。モビルスーツ好きの人からすれば、それはまったくもって「正しい」ことなので、モビルスーツ好きでありながら本作を未読の方は、先入観を持たずに一刻も早く手に取るべきと断言しておこう。
完結となる第2巻は、いよいよ量産機としての正式採用をめぐって、水陸両用モビルスーツの試作機たちがトーナメントバトルを繰り広げることに。そして、あのジュリックが! あのアゾックが!! 幻の機体が大激突!!! ……と言われて「マジか――――――!」と興奮できる人には本当に心からオススメ。
特にアッガイ最大のライバルとして立ちはだかるジュリックのカッコよさときたら、本当にほれぼれするほど。
……で、「ジュリックって……何?」という方は……まぁ、それはそれで本作で学習するのもいいんじゃないでしょうか?
なんせ、『機動戦士ガンダム』本編を見ていても、ジュリックなんてモビルスーツは1秒も出てきませんからね!
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。