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『四畳半の祓魔師』 第1巻 リカチ 【日刊マンガガイド】

2016/07/30


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『四畳半の祓魔師』


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『四畳半の祓魔師』 第1巻
リカチ 新潮社 ¥580+税
(2016年7月9日発売)


「祓魔師」と書いて「エクソシスト」と読みます。
さぞかしド派手な妖怪退治をこの表紙の2人が行うのだろうと思いきや、まーったくそういうマンガじゃない。
これは魔人の少女ニキータと、冴えなさすぎる祓魔師・九多朗が四畳半で、ダンスをニコ動に投稿したり、楽天で買い物したりと、グダグダすごすホームコメディだ。

九多朗は代々祓魔師の家系として、たまたまニキータを呼び出した。
見た目は幼女、しかし元の姿は非常に巨大な魔人。
持っている力はあまりにも強力すぎて、害悪を及ぼす妖怪なんてワンパンでオーバーキル。
彼女の前ではアクションもへったくれもないのだ。

魔人と契約する際、呼び出した者の命か、魔人の望みを叶えるか、どちらかの対価が必要になる。
ニキータの望みは「呪いを解くこと」だった。
ところがどんな呪いで、どうやって解くのか、彼女はいえないらしい。
かくして、超大飯ぐらいのインターネット通販大好きなわがまま幼女魔人を、九多朗は家に住まわせることになった。とにかくお金がかかるため、いつも赤貧だ。

九多朗は彼女に小言を日々いってはいるものの、なんだかんだで折衷点を見つけて、彼女の欲求を満たしてあげている。それは彼が自分の身を守るためではない。
たとえばニキータが水族館に行きたいと駄々をこねた時。食費と通販が多すぎてお金がないため無理だ、とさとした。ところが彼、こっそり水族館のチケットを用意していた。
これにはニキータ大喜び。目をキラキラさせてはしゃぐ。

不器用ながらも思いやりのある貧乏青年と、幼く無邪気で裏表のない魔人・ニキータ。
ニキータはちゃかすように「恋人同士」といっているが、今はまったくそんな関係ではない。
ちょっと変わった養子と養父のような、でもやっぱり祓魔師と召喚魔人のような、不思議な関係だ。

ただ、契約関係であるということは、いつか必ず別れも訪れる。
今はふんだりけったりでも、そこそこ楽しく暮らしている2人。
だが契約であるがゆえに、一緒に暮らせる時間には限りがあるというはかなさが、常にちらついている。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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