日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ガンカンジャ』
『ガンカンジャ』 第1巻
フツー KADOKAWA ¥1,000+税
(2016年7月29日発売)
がんだなんて、そんな疑いすら持っていなかったのに、突然宣告を受けたら。家族や恋人にどんな言葉を選んで伝えればいいのか? 自分だって信じられないというのに……。
“ステージ4のがん患者”となった26歳の青年が主人公の本作、筆者は当初、すっかりノンフィクションだと思って読み進めていた。
実際は、著者が父親をがんで亡くし、またがん患者会の支援活動をとおして得た体験をモチーフに創作されたフィクションである。
フィクションかノンフィクションかは大きな問題ではない。確かなのは本作からは闘病する本人、そして家族や友人たちの心情がリアルに伝わってくるということだ。
苦しい、辛い。親に介護してもらうのは、いたし方ないけどなんだか気まずい。
ユーモアを失いたくないけれど、冗談のいい方が難しい。
抗がん剤でよくなるのか。もっと悪くなったらどうなるのか。
そして、何よりも「生きたい」という気持ち。
たとえ退屈で平凡な日々であろうとも、自分の人生を生きることができる……そのありがたみがひしひしと迫るのだ。
人はみな死に向かい、また愛する人たちを失うという事態に直面する。
悲しみや苦しみはあらかじめ私たち人間に宿命づけられたもの。死から目を背けても、苦しみはなくならない。
死が日常にその影を現した時、どんな気持ちでそれに向きあうべきか。
きれいごと抜きに――極めて現実的に、しかし穏やかにその手がかりをくれる作品である。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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