365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
10月10日は目の愛護デー。本日読むべきマンガは……。
『腕 ~駿河城御前試合~』第1巻
南條範夫(作) 森秀樹(画) リイド社 ¥619+税
本日10月10日は、1931年より中央盲人福祉協会によって「目の愛護デー」と定められている。失明予防の運動として定められたこの日は、毎年厚生労働省が中心となり、目の健康を促す活動や、様々なイベントが行われているのだ。
今回は、あるきっかけから視力を失った男の登場する『腕 ~駿河城御前試合~』を紹介したい。
本作の原作は、山口貴由の『シグルイ』の原作としてもおなじみな、異能の剣士たちの死闘を描く南條範夫の『駿河城御前試合』だ。
物語は、盲目の剣士・伊良子清玄と隻腕の剣士・藤木源之助の試合から幕を開ける。
立ち会う2人はどちらも剣豪・岩本虎眼の門下生。清玄は、かつて岩本道場の師範代を努めていたが、虎眼に目をかけられながらも、その妾との不義関係を発見されたことで、虎眼の秘剣「星流れ」によって視力を奪われてしまう。
だが、天賦の才によって秘剣「無明逆流れ」を編み出し、盲目というハンディを克服した清玄は虎眼を殺害。一方、清玄同様に岩本道場師範代であった源之助は師匠の仇討ちのために清玄へと挑むが、左腕を斬り落とされてしまう。
そんな因縁を抱える2人の対決だが、過去に『新・子連れ狼』を手がけ、現在では『戦国自衛隊』を連載している劇画の大ベテラン・森秀樹の作画は静と動のバランスが絶妙で、短いながらも達人の間合いを感じさせる立ち合いをみごとに劇画化している。
清玄と源之助の試合以外も、ガマ剣法を扱う屈木頑之助などといった原作にも登場するキャラに加え、全身を藁束で覆った不気味な剣士・仏法僧や、幼少時より自らが持つ巨大な鼻に翻弄されてきた禅智内供など、本作オリジナルのキャラを扱った試合も多く登場。
そのルックスから、原作に忠実で渋い作品と思われがちな本作だが、読者を驚愕させるオリジナル展開が頻発し、インパクトは決して『シグルイ』にも負けていない。
異能同士の戦いに飢えている人間なら、ぜひ読むべき作品だ。
あらためていうが、本日は目の愛護デー。目の健康に気をつかうのはもちろんだが、目を潰されるような行いをしないようにも気をつけていきたいところである……。
<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
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