日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『なんくる姉さん』
『なんくる姉さん』 第1巻
久米田康治(作) ヤス(画) 講談社 ¥602+税
(2016年9月20日発売)
『じょしらく』のタッグ再び。
かわいい女の子と、言葉の裏をかくブラックユーモアの切れ味は今回も鋭い。
主人公の木西一茶(きにし・いっさ)は、細かいことなんでもかんでも気にしすぎる少年。
妹の木西輝夜(きにし・てるよ)は、あらゆるものをコスパで考えて生きている極度のケチ。
神経質な兄妹は、カレーうどんの汁が服一面に飛びはねても気にしないほどのんびりした女性「なんくる姉さん」に出会う。
お金がなく住む家を失った木西兄妹。彼女が住む、埼玉県入間にある小さな集落「なだそう荘」に転がりこむことになった。
一茶の心配性は、心を病んでしまいそうなレベル。『さよなら絶望先生』の糸色望と並ぶほどだ。
一方でなんくる姉さんが管理している「なだそう荘」の住民は、極度に雑。
医者は無免許なのを気にしない。女の子は賞味期限を気にしない。ミュージシャンは実在の曲をパクっても気にしない。
読んでいて不安でしかたなくなる。「なだそう荘」はいったいなんのためにあるのか。
今までの久米田康治作品を読んできた人なら、裏がありそうなのを薄々感じるはずだ。
ヤスの手によって描かれたなだそう荘は、あまりにも不自然な形状。現実から隔絶された世界になっている。
第1巻のラストではエライことが起きている。どう話が着地するか全然わからない。
『せっかち伯爵と時間どろぼう』では、主人公がのんびりしており、伯爵がせっかち、という組みあわせだった。
今回は逆。なんくる姉さんがやたらのんびりなのには理由があるんだろうか。
「なんくるないさ」のノリが、よさに向かうのか、危険につながるのか、現時点では判別できない。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」