365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
11月2日は習字の日。本日読むべきマンガは……。
『ばらかもん』第1巻
ヨシノサツキ スクウェア・エニックス ¥571+税
11月2日は「いいもじ」で習字の日。
「正しい美しい愛の習字」を理念に掲げた公益財団法人 日本習字教育財団が2013年に制定した。
意外と歴史が浅い記念日だが、デジタルメディアが普及した今、毛筆や硬筆で美しい文字を書くことの重要性を見直そうという考えで制定されたそうだ。
11=「いい」はともかく、02=「もじ」は強引するぎるような気もしないでもないが……。
まぁ語呂合わせの美しさまでは気にしていられない、ということでひとつ。
てなわけで本日紹介するのは習字のマンガ。
アニメ化もされたヨシノサツキの大ヒット作『ばらかもん』だ。
とはいえこの作品、『とめはねっ!』のような本格的な書道マンガではなく、あくまで主人公が書道家というだけで、基本的には長崎県の五島列島(ヨシノの出身地)を舞台にしたスローライフコメディである。
物語は売り出し中の若手書道家・半田清舟が、とある受賞パーティーで自作にダメ出しをした偉い人を殴るという暴力事件からスタートする。
著名な書道家の父は「人間として欠けている部分」を見つけさせるため、息子を島流しに……。オンボロの平屋でひとり暮らしを始めた半田は、天然元気少女の琴石なるを始めとした島民たちと交流を重ね、少しずつ変わり始めていく。
このように半田が自然豊かな五島列島で、人間として、書道家として、成長していく縦軸が背骨にはあるが、作品の魅力は島民たちと半田のハートフルなやりとりを描いた横軸のほう。
どこの住居も鍵なんかいっさいかけず、いつでもだれでもウェルカムな悪人のいない場所。いまだに黒電話を使い、有無を言わさず食糧を押しつけ、季節のイベントには(ほぼ)強制参加。
そんな楽園で、思いのままにしたためる半田の書は、時にド迫力、時にド繊細で、感動的な美しさだ。
疲れたとき、パラパラと半田の書を眺めるだけでもヒーリング効果は絶大ですよ!
<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。公開中の映画『金メダル男』(内村光良監督)の劇場用プログラムに参加しております。