日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『ブラッドラッド』
『ブラッドラッド』 第17巻
小玉有起 KADOKAWA ¥580+税
(2016年12月31日発売)
魔界を巻きこんだ大騒動、ここに完結。
これ以上ないくらいの、大団円!でした。
魔界のいちナワバリを仕切っているボス、吸血鬼のスタズ。
彼はその強力な魔力で、周囲に尊敬される存在だった。
日本の文化大好き少年の彼は、たまたま魔界に迷いこんだ人間の少女・柳冬実に出会い、激しい好奇心を抱く。
ところが冬実はあっさり死んでしまい、幽霊に。
彼女を人間に戻す方法を探すべく、スタズは冬実とともに旅立った。
物語後半では、膨大な魔力で魔界の存続を揺るがす、強大な敵が現れる。
1巻からかなりチート気味なキャラばかり(ボス格だから当然)登場していたが、そんな彼等ですら手に負えない。
シリアス続きのバトル展開の後、この敵を倒すために選ばれた手段は、原点に戻ったスタズの、ジャパニーズオタクカルチャー的トンデモなノリと、冬実の存在。
物語が魔界全体の規模まで拡大するため、正直冬実の出番がそれほど多くないこともあった。
しかし終盤は、冬実がもっとも重要な存在として機能する。
プライドが高く能力もあるスタズが、血まみれになってでも戦うのは、冬実のことが気になっているからだ。
彼自身は恋心や愛をまったく知らないため、本能や趣味のため、とも序盤はとれた。
だが、彼はきちんと気持ちに決着をつけていく。
それはある意味、敵を倒すより難しいことだった。
暴れん坊のスタズをたしなめられる唯一の存在が冬実、というのもいい。
たしかにスタズは絶大な魔力を誇り、戦いにも慣れている。
けれども仲間と力を合わせるとか、信頼するという点が大きく欠如している。
冬実は、彼にそれを気づかせることで、大きな成長をうながす。
これまでに出てきたキャラほぼすべてが登場する最終巻。
みんな何らかの幸せを手にしていくのが描かれるので、たいへん気持ちがいい。
ラストのスタズは、強引な性格こそ変わらないものの、一皮も二皮も向けた、いい顔をしている。
次はぜひ「ハイドラベルとウルフの大冒険」が見たいです。
<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」