365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
1月24日は横井庄一が発見された日。本日読むべきマンガは……。
『ケロロ軍曹』 第1巻
吉崎観音 KADOKAWA \540+税
1972年のきょう、1月24日。
マリアナ諸島の南端にあるグアム島で、現地の猟師がひとりの日本人に遭遇し、その身元が伝わるや日本国内で大いに騒がれることとなった。
人物の名は、横井庄一陸軍伍長(当時)。
太平洋戦争が終わったことを知らぬまま、約28年ものあいだ島でサバイバル生活を続けていた元・日本兵である。
1944年にグアムの歩兵連隊に配属されるも部隊は壊滅、以降は若干数の仲間とともに潜伏ゲリラ戦を続けて山中やジャングルを住みかに自足自給の暮らしをしていたという。
その果てに、最後は彼ひとりが生き残っていたのだ。
日本に戻ってきた横井氏は、世代がひとつめぐった高度成長期の日本にいきなり戦争の記憶を再起させるタイムスリップ的存在として、一大ニュースとなった。
帰国時に横井氏が口にしたということにされた「恥ずかしながら帰ってまいりました」というフレーズは流行語と化し、これ以降のフィクション作品でもちょっとしたコメディ場面でモノマネをするキャラクターが散見されるようになる。
ただしこのセリフ、横井氏が空港へ出迎えにきた厚生大臣に述べた言葉や、その後の記者会見での発言が混ざったもので、このいい方そのものズバリをしたことはないようだ。
そして、横井さん関係で当時もうひとつはやったものがある。
腰かける時の「よっこいしょ」と彼の名前をかけた「よっこいしょういち」というダジャレだ。
アニメ『らき☆すた』(2007)第6話で女子高生の柊つかさちゃんがごくナチュラルにつぶやいたシーンをご記憶のかたもおられるだろう。
あれは若い子にわからないネタをあえて若いキャラにいわせるという、死語を逆手にとった小ネタだった。
さて、敵地に取り残されて潜伏ゲリラとなった兵士のサバイバル、というつながりで、今回は『ケロロ軍曹』をピックアップしたい。
地球侵略の先行調査のため異星の軍隊から送りこまれたカエル型宇宙人の軍曹ケロロとその部下たちが、とあるトラブルから故郷に帰るすべを失い、オカルト大好き少年・日向冬樹やその家族友人のもとでドタバタの居候暮らしをくりひろげるSFコメディマンガである。
藤子・F・不二雄の居候キャラものをベースにしつつ、ケロロが愛好するホビーとしてガンダムやガンプラがひんぱんに描写され、またエヴァをはじめとするアニメ・マンガ、宇宙刑事などの特撮パロディまで様々な要素が盛りこまれて全ジャンル・全年齢的に楽しめる内容になっている。
アニメ化されたおりにはキッズ作品寄りにアレンジされたのが功を奏し、テレビシリーズがおよそ7年間継続、長編劇場アニメも5本つくられた。
余談だが、そのテレビアニメ版の第300話に、「オノノ少尉」というキャラクターが登場する。
遠い昔に死んだと思われていたのが地球で発見されたケロン軍人で、モデルはおそらく“最後の日本兵”こと小野田寛郎少尉だろう。
フィリピンで29年間潜伏したのち終戦を知らされて1974年に帰国した人物であり、横井氏と近い時期に見つかった類似の例としてこちらも大きな話題となった。
<文・宮本直毅>
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
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