日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『大市民傑作集 冬の美味しは、これだ!編』
『このマンガがすごい!comics 大市民傑作集 冬の美味しは、これだ! 編』
柳沢きみお 宝島社 ¥590+税
(2017年1月21日発売)
実写化もされた『特命係長 只野仁』の著者として知られる、大御所漫画家・柳沢きみお。 彼が25年以上も描き続けている、もはやライフワーク的作品ともいえるのが『大市民』シリーズだ。
本作は、小説家である主人公・山形鐘一郎のなんてことのない日々を描いた作品。
周囲の人物は、お金や物に固執しない山形の生き様に感化され、自分なりの人生を見つけようとしていく。
まさに、柳沢氏の人生哲学が凝縮されたかのような一作だ。
そんな『大市民』シリーズには、たびたび「食」をテーマにしたエピソードが登場する。
その珠玉のエピソードから、「冬の食」にまつわるものを収録したのが、『大市民 傑作集 冬の美味しは、これだ!編』だ。
なべ焼きうどん、屋台のラーメン、手作り餃子、焼きモチ、カニ……。
どれもこれも今の時期に食べたくなるものばかり。
そして、食卓を囲む人たちに投げかける山形の言葉がなによりもしみる。
夢を追いかける若者への応援、人生における恋の重要性、日本人が使うくだけすぎた話し言葉。
それらに対して山形は意見を述べるが、けっして説教じみておらずスッと入ってくるのは、やはりあくまでも食をテーマにエピソードが展開されるからだろう。
食というものは人生に通ずる――。
山形はそれを読者に教えてくれているのかもしれない。
<文・五十嵐 大>
'83年生まれの、引きこもり系フリーライター。デスゲーム系やバトルもの、胸キュン必至の恋愛マンガやBLまで嗜む、マンガ好きです。マイブームは、マンガ飯の再現。