日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』
『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』 第1巻
手塚治虫(作) つのがい(画) 小学館 ¥690+税
(2017年1月25日発売)
あまりに巧みな手塚治虫タッチにうならされる!
それこそ手塚自身もちょくちょく自分のマンガにギャグやパロディを取り入れたわけだが、その感覚さえも絶妙に踏襲してみせる手腕に驚愕!
『ブラック・ジャック』のパロディをSNSに投稿するやたちまち話題を呼んだ、謎の漫画家・つのがいの単行本が40P超の描きおろしを加えて登場だ。
現代を舞台に蘇ったブラック・ジャックはゆとりな貧乏医師、いい子なドクター・キリコ、浮かれきったパリピのロックたちが過ごすしょ〜もない日常エピソード。
まぎれもなくギャグなのだが、BJ(ブラック・ジャック)の世界へのリスペクトと愛情にあふれていて、なんともいえない気持ちがこみあげてくる。
“こんなブラック・ジャックはイヤ”だけど(笑)、「ひょっとしたらブラック・ジャックはこんな顔をしたかも?」と思わせる説得力があるから……。
巻末には、まったくマンガに縁のなかった著者・つのがいがわずか1年半前に初めて絵を描き始めるに至ったきっかけ、ブラック・ジャックを描くことにのめりこんだ日々を綴ったエッセイマンガが収録されている。
ちなみに本作に収められているのはギャグ作品ばかりではない。
手塚先生が登場する作品、ブラック・ジャックとピノコの心あたたまるショートストーリー。
愛くるしいピノコとユニコのツーショットなど、カラーイラストも満載。
著者は本作を機に、手塚プロダクション公式の作画ブレーンに抜擢されたということで……これからも「こんな場面が見たかった!」をたくさん描いてほしい!
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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