「おわらファイブ」のルーツは、あの名作に!?

――今、小玉先生が読者として楽しみにしているマンガはありますか？

小玉　諫山創先生の『進撃の巨人』[注8]を楽しみにしています。ストーリー、キャラクター、世界観、どれも好きで。幸村誠先生の『ヴィンランド・サガ』[注9]も大好きです。

――やはり読み手としては少年マンガ界の住人[注10]なんですね。少年マンガを描こうと思ったことはなかったんですか？

小玉　描けないんですよねぇ……少年マンガらしい、勢いのある世界は。描く上では人間関係をじっくり描くほうが好きなので。

――影響を受けたと思うマンガも、やはり少年向け作品がメインになりますか？

小玉　そうですね、「週刊少年ジャンプ」を愛読していたので、『DRAGON BALL』、『SLAM DUNK』、『幽☆遊☆白書』、『ろくでなしBLUES』[注11]とか……。

――『ろくでなしBLUES』ですか!?

小玉　大好きですよ。ふだんケンカばっかりしてるんだけど、たまに女の子との絡みがあるじゃないですか。あのへんがときめくんですよね。ぶっきらぼうなヤツが急にかわいく見えて。あと「奇面組」も重要です！　私、「おわらファイブ」は（『ハイスクール！奇面組』[注12]に登場する）奇面組のイメージで描いてるんです。

――えっ、これはたいへんな衝撃です（笑）！

小玉　もちろん、そのまんまになっちゃまずいので変えていますが。連載前に描いたイメージスケッチは……。

――この前髪ぱっつんの子の髪型は、奇面組の大くんっぽいですね。

小玉　光の原型は一堂零っぽい……とか。そういえば（『月影ベイベ』の）男子5人と女子2人っていう登場人物のバランスも、考えてみたら『奇面組』のキャラクターと同じで。自分のなかに深く根づいてたんでしょうね。

――あとからそんなふうに気づくものなんですね。

小玉　無意識にいろいろ出てるんですよ。これもあとで気づいたんですが、『坂道のアポロン』でいうと、千太郎のビジュアルは『ジョジョ』第3部の承太郎[注13]からの影響があるなって。キャラを立てようと思うと、過去の引き出しから「かっこいい」と感じた男の子像が出てくるのかも。そこに私の場合、少女マンガの王子様的なキャラがないんですが（笑）。

――小玉先生の作品を男性読者がスムーズに読めるのは、そのせいかもしれませんね。『アポロン』にしても、薫も千太郎も早々に弱いところが描かれてますし。

小玉　強そうに見える人の弱いところを描くのが好きなんですよ。確かにこれって、完全に少年マンガの主人公像ですね（笑）。『アポロン』の淳兄も、『ろくでなしBLUES』的というか、兄貴的なイメージです。

――ヒロイン像はどうでしょう？

小玉　女の子は、好きな作品からイメージをもらうことは、あまりないですね。あ、これは影響でもなんでもなくて、完全に余談なんですけど……この蛍子は、頭の中で「女型の巨人」を思い浮かべながら描いてました（笑）。

一同　（爆笑）

タイトルの“ベイベ”の意味は……

――『月影ベイベ』の今後の展開は？

小玉　具体的なことは言えませんが……けっこう先まで決まっています。

――ラスト近くまで、という感じですか？

小玉　そうです。「今すぐ最終回を描いて」と言われても、描けるぐらいには（笑）。

――そこまで!?　それは連載当初から決めていたんですか？

小玉　着地点は決めてから描き始めました。あとはキャラたちがどんな道筋で、どのくらいの時間をかけて行き着くか次第ですね。

――ちなみに、タイトルの“ベイベ”には、どんな意味がこめられているのでしょうか。

小玉　たぶんラストまで読んでいただけるとわかると思います。そうそう、取材に行った時、八尾の人たちも“ベイベ”の意味は気になっていたみたいで、同じ質問をされたことがありますよ。

――その時も同じ答えを？

小玉　ええ。そうしたら質問をしたおじさんが、「俺、ベイベってあいつのことだと思ってたけど、違うのかな……？」って考えこんじゃってました（笑）。

――モヤモヤすると同時に、先がますます楽しみです！

小玉　ありがとうございます。この作品が皆さんに選ばれて、とても光栄に思っています。がんばって描いていきますので、引き続き、応援よろしくお願いいたします！

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取材・構成：粟生こずえ・編集部　撮影：辺見真也