漫画家ゆうきまさみはサービス精神のある「芸人肌」?
――さて、いよいよ第5集が発売されました。『白暮のクロニクル』は、「羊殺し」という全編を貫くテーマがある一方で、コミックス1冊単位でも話が成立しています。
ゆうき そうですね、どの巻から読み始めたとしても、登場キャラクターがどういう人なのかわかるように描かなくちゃ、と考えてやってます。
――第5集の見所は?
ゆうき 第4集で魁とあかりの仲がちょっと悪くなったのが、第5集では修復します。
――そのあたりの感情の流れが注目のポイント、と。
ゆうき そうですね、あと「オキナガ」とはどういうものなのか、もう一度ちゃんとやろうと思っています。まぁねぇ、本当に切羽つまって始めたマンガだから、わりとずーっと自信がなかったんですよ。や、今も自信満々で描いているというわけではないんですけど、ただ、今は楽しんで描いてますので。
――今、『白暮』と『でぃす×こみ』を同時連載してますが、昔、『あ~る』と『バーディー』でやったような仕掛けは?[注8]
ゆうき それはないと思いますよ(笑)。あの頃は、ぼくも同人誌をやってましたから、ああいう遊びができたんですね。両方読んでくれている人には楽しんでもらえるかなぁ、と。なんかね、芸術家肌の漫画家とか、職人肌の漫画家っているじゃないですか。芸術家肌だと、年を取って読者がいなくなってもマンガを描き続けると思うんです。職人肌だと、注文に応じて描くけど、自分が正しいと思うことをやりたい。それに対してぼくは、芸人肌の漫画家なんだと思う。喜んでくれる読者がいなければ、マンガを描く意味がないというか、読者にどう喜んでもらうかが大事なんですね。
――今後も楽しみにしています!
前編はコチラ!
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』インタビュー【前編】 画業30年を越えて初挑戦のミステリーは、計算しないで描いている!?
中編はコチラ!
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』インタビュー【中編】 ラストはもう決まってる!? ゆうき流マンガ創作術に迫る!!
- 注8 『あ~る』と『バーディー』でやったような仕掛け 『究極超人あ~る』の「海だぜっ」の回(コミックス第6巻収録)では、光画部が海に行くが、あ~るが岩場の向こうにバットを投げてしまう。ここで「すいませーん、投げ返してくださーい!!」と叫ぶと、何者か(シルエット)がバットを投げ返してくれるシーンがある。「週刊少年サンデー増刊号」1986年9月号に掲載された読切作品『鉄腕バーディー 幻の潮騒』(『鉄腕バーディーARCHIVE』収録)では、岩場でバーディーがバットを拾い、そこに「すいませーん投げ返して下さーい!」と声がかかり、バーディーが投げ返すシーンがある。異なる2作品をリンクさせた、両作品を読んでいた読者ならニヤッとするような仕掛け。
取材・構成:加山竜司
撮影:辺見真也