いつまでももとに戻れない……斬新な「長期男女入れ替わり」
――「男女入れ替わり」というアイデアはどこから生まれたものなんでしょう?
将良 「マンガのネタどうしようかなー、そういや入れ替わりってよくあるなー」ぐらいに考えていて。当時、働きながら考えごとをするのがクセになってて、小さい子どもがたくさん来る店だったので、たとえばお店にくる子どもたちくらいの頃から入れ替わったらどうかな?と思いついて。
「入れ替わりもの」って、一大ジャンルになるほど深い世界だということは、『ちぇんじ』を発表後に、読者のかたから頂いたコメントで初めて知ったぐらいで、『転校生』[注3]もちゃんと見たり読んだりしたことがなかったんです。
――それは意外ですね。
将良 「誰かになりたい」って、いちばん身近なファンタジーではあるけれど、だけど高校生だとどうしても“性の意識”みたいなものが物語のメインになってしまう。それが中学生だったら、小学生だったら……と考えていって、小学生のなかでもギリギリ自我が芽生えてて、自分の性格とかもわかってるぐらいの年齢で入れ替わって、そこから成長していったらおもしろいかなと。
――まさに絶妙な年齢ですよね。成長させていったら……ということは、最初から「長期戦」になることは決まってたんでしょうか? 『思春期ビターチェンジ』では、1巻の早い段階で『転校生』のような方法では簡単に戻れないことが示唆されていますが。
将良 そうですね、だいたいの話の流れは最初に思いついたので、あとは、「戻りたいけど戻れないまま成長していく」という過程のエピソードを、中学生になったらこういうこともあるかな? って、自然に出てきたものを描いていく感じでした。絵もラフなタッチなので、これだったらWEBでもラクに描けるかなと思ったので個人サイトを作って連載をはじめました。。その頃、仕事から帰って、夜の11時から夜中の2時ぐらいの休息の時間にちょこちょこっと。
――1ページ5コマ形式は、WEBで発表することを前提に決めたんですか
将良 1ページで区切った時に5コマがキリがよくてpixiv[注4]とかでも縦長の漫画が多くてそのクセのまま描いてました。
――『思春期ビターチェンジ』を初めて読んだのは単行本だったのですが、5コマ形式って気付かずに読んでました(笑)。あのシンプルなコマ割りがポップな絵柄と合ってるし、淡々とした日常の積み重ね的なストーリーにもハマってる気がします。
将良 『ちぇんじ』から『思春期ビターチェンジ』に描きかえる時に、一度、普通のコマ割りでネームを描いてみたんですよ。でも、やっぱり5コマのほうが収まりいいんじゃないかって結論になって。自分が普通のコマ割りに慣れてないというのもあるけど、不思議と5コマのほうがテンポよく読めたんですよね。
――それはそれで、読んでみたかった気もします(笑)
- 注3 『転校生』 大林宣彦監督、尾美としのりと小林聡美主演で1982年に公開された映画で、男女入れ替わりの元祖ともいえる青春映画の金字塔。当時から現在まで熱狂的ファンを生み出し続けており、正式なリメイク作品のほかにも、多数のオマージュ作が存在する。原作は山中恒の児童文学『おれがあいつであいつがおれで』。
- 注4 pixiv イラストの投稿に特化したSNSで、WEBサイトやブログを運営するよりも手軽に多くの人の閲覧が望める作品発表の場として、絶大な人気を集めている。近年はマンガ投稿の場としても定着しており、専門ビューアで1ページずつ投稿・閲覧できる機能も。