性差によるドキドキではなく、日常的でささいなドキドキを描く
――作品の話に戻ると、まず入れ替わり直後のエピソードで、小学生のユウタとユイがお互いの家庭環境に衝撃を受けるシーンが印象的でした。たしかに、これまでの「男女入れ替わり」って性的なドキドキがメインで、夕ご飯のメニューがどうとか、家の雰囲気がどうとか、こういう日常的で細かい部分はあまり描かれてなかったなって。
将良 私の場合、入れ替わりでまず思ったのが「お互いの家に帰ることになるよなー」ってとこなんです。小さい時、友だちの家へ遊びに行って、家の作りとか雰囲気が自分の家とまるで違うことにびっくりした記憶があって。あと、夕ご飯をごちそうになった時、カレーでも家によって全然違うことや、食べかたも床に座るかイスか、テレビはつけるか静かに無言で食べるか……みたいな、いろんな違いが衝撃的だった。人によって家庭環境が異なるって、大人になれば当然のように理解してることなんですけど、子どもにとってはすごいカルチャーショックだし、入れ替わって他人の家に行くんだよなーって思ったら、やっぱりまず浮かんだ部分ではあります。
――たしかに入れ替わりでもしないかぎり、素の他人の生活をのぞき見る機会ってなかなかないですよね。
担当 商業的にはどうしても1話目はドキドキワクワクする展開が求められがちなので、新連載1話目中盤が夕ご飯だけでいいのか!?ってなると思うんです。入れ替わったらもっとやることあるだろ、お風呂とか!と。
――商業誌での連載となると、編集長をはじめ多くの人のチェックが入るかと思うのですが、その過程で「もっと盛り上がりを!」みたいな声があがることもあったのでは?
担当 『ちぇんじ』を読んで、これが将良先生の個性なんだと理解してお声をかけたのもありますし、編集長もこの作品に無理にお色気などで盛り上がりを足しても、かえって作品の魅力を損ねるとわかってくれたので、『ちぇんじ』のままの路線でいこうということになりました。そのへんは、もともと商業誌への掲載を目指した作品だったら生まれにくかった個性かなと思います。
将良 そうですね。初めてのお風呂シーンでドキドキとか描こうと思えば描けるけど、やっぱりもとが個人サイトだったので、家庭環境とか人間関係とか自分の気になる細かいことを描いていこうと思って。