「どこにでもいる」けど「被らない」。2つの要素を持つキャラクターたち。
——美星さんとアオヤマはもちろん、その章、その章に登場するゲストキャラクターたちも非常に印象に残る子たちばかりですが、キャラクターをつくる際には、どのようなことを意識されていますか。
岡崎 基本的にキャラクターづくりで苦労したことがなくて。
「どこかにいそうだな」ってことを前提としていて、そうしないと作中で描かれる人物の感情に説得力がでないと思っているので。
なのでわりと自然に、自分のなかから出てくるものを重視してキャラクターをつくっています。そこから若干、個性の部分を誇張して描くというか……。
——たしかにどのキャラも突飛な部分があるわけではないのですが、非常に印象に残ってきますね。
「どこかにいそうだな」という感じを大切にされているということですが、誰かをお知り合いをモデルにキャラクターを考えるということもあるのでしょうか。
岡崎 そうですね。そういうことも作品によってはあります。口癖みたいなものをそのまま採用したりですとか。ただ『タレーラン』では……あんまりいないですね(笑)。
ただ文章を読んでいて、誰のセリフかわからなくなることがないように1人ひとり口癖というか、口調を変えたりということは意識してやっているので、キャラクターが立っていると言っていただけるのであれば、そういう部分も大きいかもしれないです。
キャラが被らないようにというのは、とても大事にしていますね。
——「どこかにいそうだな」という感じと「被らないよう」にというのは、相反することのようにも聞こえるのですが、そこバランスというのは。
岡崎 やっぱりそのキャラクターを自分のなかにイメージすることですかね。ビジュアルとしてということではないんですけれど、頭のなかである程度キャラクターにしゃべらせて、「このキャラクターはこういうこと言うだろう」とか、「こういう口調になるだろう」とか、そういうのあらかじめイメージしてから、セリフを言わせるようにしてますね。
やっぱり小説を書いていくうえで、「この発言をこのキャラクターにさせたい」っていう場面はあるんですね。けど、でもどう考えてもこいつはそんなこと言いそうじゃないなと思ったら、ほかのキャラクターに言わせたりだとか、表現を変えてみたりとか……そこらへんは丁寧にやるように意識しています。
——そうやって生み出されてきたキャラクターが、原作小説1巻だけでもかなり登場すると思うのですが、岡崎先生のお気に入りは。
岡崎 どうですかね、1巻からですよね。1巻だと……やっぱり健斗くんですね。あの章が個人的におもしろいものになっているかなと思っていて、原作小説4巻のショート・ショートにも健斗君は再登場させています。
やっぱりいろんな年齢層のキャラクターを出したいというのは、自分のなかに常にあるんですけれど、どうしても若者中心というか今の自分の年齢までのキャラクターばかりになってしまうので、そういったなかでポンと若い健斗君の存在はおもしろかったかな。
——いろんな年齢のキャラクターを書きたいということは、いろんな年齢の読者に対して物語を書きたいということでもあるかと思うのですが。
岡崎 やっぱり『タレーラン』書いて感じたのは、小中学生にも読んでもらえてるなって。小中学生のときに触れる本っていったらほとんど読書の入り口ですよね。そういう今まであまり小説とか読んでこなかった人たちに、本を手にとってもらうだけじゃなくて、そのまま読書っていう世界に足を踏み入れてもらわなくちゃいけない。そういう作品をつくっていくことがすごく大事だなって思っているので、もし『タレーラン』がそういう作品になったのであれば、いいなとというふうには感じております。
——うれしいですよね、子どもが初めて読んだ小説が『タレーラン』だったって言ってくれたら。
岡崎 「小説なんかそれまで読まなかったのに、『タレーラン』は一気に読んで、早くつづきを買ってきてくれと言われた。」っていう親御さんからのお言葉を聞くことがあって。とてもすばらしいことだと思ってます。
超人気シリーズを支える秘密を惜しげもなく披露してくれた岡崎先生。そんな岡崎先生の瞳には、9月17日には単行本第2巻も発売されるコミック版『珈琲店タレーランの事件簿』は、どのように映るのか。率直な感想を語っていただいた。なんとそのなかで発覚する衝撃の事実! 岡崎先生のミステリーのルーツとは!? 次回のインタビューは9月18日更新予定!
取材・構成・撮影:このマンガがすごい!編集部