俺たちの戦いは明日も続くぜ!
『テラモリ』は社会人応援マンガ
――『テラモリ』のように、職場で体験する「痛み」が描かれる作品には強く惹きつけられますが、身につまされすぎて辛くなることも。『テラモリ』は、そのあたりのさじ加減が絶妙だと思うのですが、バランスを取るために気をつけていらっしゃることはありますか?
iko 担当さんのおかげです。重たくなりすぎると「もう少しライトにいこう」とか、「ここは上げ調子でうまくまとめながら救いの回にいこう」とか、読者が読んで気持ちいいところに導いてくださるので。それがないと、私自身はどんどんのめりこんでいってしまうタイプなんです。
――では、担当さんの存在がなければかなり重い話になっている可能性も?
iko ありますね。だけど、自分でも「せっかくマンガを読んでもらうんだったら、最後に『救われた!』っていうのがないとちょっともったいないかな」と思うようになってきたんです。完全なサクセスではないかもしれないけれど、「俺たちの戦いは明日も続くぜ!」みたいなポジティブな終わり方。
――それは仕事スイッチ入りますね。
iko 過去にやらかした失敗を思い出しながら描いていると古傷をえぐられるんですけど、読者のなかにも「高宮の気持ちがわかる」とか「エグられる」という方がけっこういるんです。「空気を読めていない」と言われるとか、「3年目のくせに」となじられるとか。だけど、ダメと言われた人が最後はがんばって、まわりの人もそれを助けながらみんなで問題を解決していくのがいいなあとスーツ屋で働いている時に実感したんです。それってだれの心にも余裕がある状態じゃないとできないことで、そういう意味で『テラモリ』は自分の理想郷かもしれません。
――切実なシーンもあるなかカラッとした作風なのは、随所に散りばめられているギャグの存在も大きい気がします。やはりお笑いが好きだったりするのでしょうか?
iko そういえば、そんなことはないですね。ギャグマンガも『セクシーコマンド外伝 すごいよ!!マサルさん』しか買ったことないですし……。
――では、身近にいらっしゃる方の影響とか?
iko いやあ、母が変なんですよ。母はよく職場で「おもしろいわね」と言われているみたいで、その影響下にあるのかもしれません。私、三姉妹の一番下で、母親には「放牧」と言われるほどわりと自由に育ててもらったので、それも関係あるのかも。
担当 たしかに、iko先生から予想外の発想がくることはありますね(笑)。
――きっとお母様の「放牧」の賜物ですね(笑)。
次回は人間関係がぐっと動く最新刊のお話やiko先生と担当さんのちょっと変わった打ちあわせの話、スーツへのこだわりについておうかがいしていきます。
7月21日更新予定なので、お楽しみに!
取材・構成:山脇麻生