『テラモリ』で日本男児を教育!?
――『テラモリ』には、日常で役立つスーツの豆知識がたくさんつまっていますよね。それは、働いていらっしゃった時に学んだ「スーツの基本だけでも伝えたい!」という思いがあったからなのでしょうか。
iko 私の知識なんて本当にたいしたことなくて、世の中にはもっと詳しい方がたくさんいらっしゃると思います。だけど、接客していた頃、意外と男性がスーツのことをご存じないことに驚いたんです。
たとえば、ズボンの裾にシングルとダブルがあるとか、靴紐に種類があるとか、結婚式の時に着るスーツは日本では何が正解とされているかとか。
――お話を聞いていて、私自身も「そういえば男性が結婚式の時に着るスーツって何が正解なんだろう??」と思いました。
iko 友だちだけのカジュアルな式なら思いっきりお洒落をするのもありなんですが、上司の式で茶色い靴はちょっと……というのもあります。式の形式や新郎新婦との関係性によっても正解が違ってくるのが難しいところ。
リクルートスーツなんかもバブルの頃の写真を見ると女性はストライプのスーツの人とかいてけっこう自由ですが、その後はどんどん地味傾向に傾いていって。5~6年前からは東日本大震災の影響からきたクールビズの流れで、「リクルートスーツもカジュアルでいいじゃないか」という会社が増えてきているようです。スーツ会社が市場を活性化するためにルールを作っているという声もあります。
もちろんそれもあるんでしょうけれど、流行は時代ごとに変わっていくものなので、マンガのなかで「これが正解」とは言いきりにくいんですよね。だけど、「今はこうだよ」とちょっとでも伝えることができたら助かる人もいるのではと思っています。
――難しい部分ですよね。そうやってハウツーからはじめてキャラクターを増やしていかれたわけですね。『テラモリ』には素敵なスーツ男子がたくさん登場しますが、まずはオタクでゲーマーの女子大生である、主人公の高宮についてお聞かせ下さい。
iko 自分がオタクというのもあるんですけど、ゲーマーの要素は「マンガを描いたら?」とすすめてくれた友だちからいただきました。引くぐらいいろんなことを知っている知的で素敵な人なんですけど、花の女子大生なのに恋愛に興味がなくて。高宮にはちょっと暗いところがありますが、そういう内向的な部分が私に通ずる部分はあるかもしれませんね。
――高宮は大切なご友人とご自身の要素をミックスして生まれたんですね。仕事を通して少しずつ変わっていく過程に血が通っている感じがします。
担当 それは私も感じます。キャラクターが女2人男5人なので、一見逆ハーレムものっぽく見えるかなとも思うんですけど、全然ハーレムにならないじゃないですか。いっしょに働いているなかで、自然に恋が生まれてくるリアルさが大好きなんですよね。
――学生同士でともにバイトなのに、高宮と柳川も恋愛関係にはなりません。こういう関係性もいいですよね。社会人のなかに、混じっている学生同士だからこそ分かりあえるところがあって。ちなみに、ご自身が生みだした男性キャラのなかで特に思いいれがあったり、実際にいたらタイプだろうなあと思うのはだれですか?
iko ここで平尾というのが正解なのはわかっているのですが、担当さんとよく話しているのは朝倉です。後々出てくるんですけど、料理が好きだったり、彼女に一途だったり、いろいろ手伝ったりしてくれるので普通に夫にしたらよさそうって(笑)。
――いいですね~(笑)。
iko 最新話では今までいいお兄ちゃんキャラだった朝倉の嫉妬深いところを描かせてもらっています。薬院という新キャラが登場するんですけど、薬院は3年目の社員で朝倉は4年目の契約社員なんですね。年次は朝倉のほうが上ですが、仕事のできない薬院のほうが立場が上という。しかも、個人の売上成績が出るんですが、それも薬院の方が上なんですよ。仕事ができる人と売り上げを取れる人が一致しないというのは本当にあることなんですよね。
――わかります。仕事上の嫉妬は根が深そうですね。
iko 女性の職場はめんどくさいとよく言いますが、じつは男性の世界のほうでも、上下関係もきついし、陰湿な部分もあるんじゃないかなあと感じることがたまにありまして。朝倉が奥に秘めているものはそこまでドロドロはしていないと思いますが、人が人に見せたくない部分を朝倉で描けているので苦しいけど楽しいです。