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【インタビュー】 単行本に水槽が付録でついてくる!? 『足摺り水族館』 panpanya 【前編】

2014/06/02


コンビニおにぎりは本の装丁に通じる?

――装丁関係のお話をうかがって、ちょっと芸術家肌な印象を受けました。もしかしてマンガ以外に、立体物などもお作りになるんですか?

panpanya 作ります。立体物は個人サイトに何個か載せているので、よかったら見てみてください。

1月と7月 蒸れない椅子とかね。

――なんですか、それ?

panpanya (座面の)下に扇風機が搭載された椅子で、涼しさを味わえます。ホコリが舞うので使っていませんが……。あ、これも自分で作ったものですね、3本足の自転車(書籍版『足摺り水族館』P.259掲載)[注9]

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――これは……、どちらに進むんですか?

panpanya 進まない。まあ、椅子くらいにしか使い道はありません。

――椅子ですか。

panpanya これのもとのアイディアは、実際に夢で見た乗り物だったと記憶しています。夢のなかでは、こういう構造的に走らないようなものが走っていても、違和感なくスルーしたりしますね。「車輪がついてれば走るだろ」くらいの感じで。ただ、現実に実物を作ってみると、走らないことがわかる。

――走りませんか。

panpanya 3つの車輪がそれぞれ放射状に別の方向を向いているので、どっちにも転がらず安定してしまいますね。朝起きて夢日記をつけるのが習慣なんですけど、夢日記をつけているときに「あれ、これ走らねえな」と気付きました。

――夢日記がアイディアノートになってたりするんですか?

panpanya 夢日記は単に趣味でつけているだけです。アイディアノート[注10]は別にあります、これ。

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――おお、すごい。中を拝見してもいいですか?

panpanya どうぞ。ああ、でもべつにアイディアノートということもないかもしれない。

――文章の走り書きのメモ、ラフスケッチ、外出先でのスタンプなどなど……、まるでアウトサイダーアートのような様相を呈していますね。それに、ツナマヨネーズのおにぎりの……ラベル? コンビニ各社のツナマヨおにぎりのラベル、それも原材料を示す面がそこかしこに貼られていますが、これ、なんですか?(笑)

panpanya ツナマヨおにぎりを食べるのが趣味で、新しいものを見つけたら、買って食べてラベルをこのノートに貼ります。

――単純にそれだけなんですね(笑)。

1月と7月 同じコンビニ・チェーンでも原材料が変わることがあるらしいですよ。

――地域によって?

1月と7月 地域も、時期によっても、だそうです。

panpanya 「なんか味変わった?」と思ったら、成分量が変化してたことがありました、同じ商品で。成分量の改定があったんですかね。そういう食べたものの記録というか……。

――じゃあ、日記帳兼メモ、みたいなノリなんですね。

panpanya そうですね。生活ノート。その日に手にしたもの記録とか行った場所のこととか、忘れるので。

――オススメのコンビニおにぎりって、ありますか?

panpanya スリーエフのツナマヨおにぎりが一番好きです。高知県ではスリーエフのシェアが大きくて、よく見かけるのですが、なぜか高知では海苔が味付け海苔主流なので、やはり関東のスリーエフが口にあいます。あと、セブンイレブンのツナマヨおにぎりは旨いんですが、おいしすぎて個人的には駄目です。

――えっ、どういうことですか?

panpanya コンビニのおにぎりは、料理として考えた場合、多少ヘボいくらいのものがいいんです。最近のセブンイレブンは、旨い手作りのおにぎりに迫りすぎてる。

――迫りすぎていますか。

panpanya まあ、工場の機械で作っているとは思うんですが、そのことを感じさせない「あたたかみ」が発生してるというか……、コンビニおにぎりには、機械で作った冷たいおにぎりならではのよさがあると思います。逆に機械でないと作れない味が出てる。なので、それを逸脱して手作り方面においしすぎると、ひいては家庭料理界が衰退する気がします。

――家庭料理界の衰退!(笑)

panpanya コンビニおにぎりがおいしすぎると、それだったら自炊しないでコンビニで買うって人ばかりになるんじゃないかという気がしますよ。米を買ってきて家で炊いて、具を用意して握るということを考えたら、楽ですし、コストを考えても高くはないです。そうなると家庭料理という文化が消えていくような気がして、暗い気持ちになりますよ……。おにぎり以外のお惣菜類とかも、ある程度そろうし、どれも旨いですからね。

――うーん、先ほどのお話とも通じるのかな、「物」そのものの「らしさ」というか……。

panpanya そうかも? それでいうと、デジタルを紙に寄せて作っていったりするよりは、こだわらずにデジタルの強みを生かすようにする、とか。紙にしても、デジタルと比較してのデメリットをなくすようにするという考え方よりは、デメリットを個性と見るほうが正しい気がします……どうかな、分相応、本物志向、というのとは違うかな。ああ~、でも木目調のプラスチックが使われた家具があるじゃないですか。

――ああ、ありますね。

panpanya ああいう、安っぽいイミテーションも嫌いじゃないんです。なんか、けなげで。

――けなげ(笑)。

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後編へ続く

  • [注9]3本足の自転車 panpanya先生自作の自転車、もとい椅子。車輪はあるが、どこにも進まない。画像は『足摺り水族館』のP.259より。
  • [注10]アイディアノート panpanya先生愛用のアイディアノート、もとい生活ノート。このサイズのものは2冊目だという。「やわらかい」と印刷されているが、その表紙は厚紙素材のため、かなり固い。

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取材・構成:加山竜司・編集部 撮影:編集部

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