あきらのことを「心配」しながら読んでもらえたらうれしいです
──『恋は雨上がりのように』は青年誌連載ですが、女性の読者も多いですよね。
眉月 いただくファンレターはほぼ男女半々です。ありがたいことに年齢の幅も広いです。男性でお手紙をくださるのは店長と同じくらいの年代の方が多いです。男性からの感想は「店長とあきらをくっつけてほしい」とか「店長を見てるといたたまれない」というのが多いかな。
──女性の感想はちょっと違うんですか?
眉月 女性読者のほうは、感情移入しつつもあきらを親身になって見守ってくれてる感じですね、年齢問わず。必ずしも「店長への恋心がかなうように」ではなく、「あきらには幸せになってほしい」みたいな。
──わかります! 店長も好きだからもちろんくっつくのもアリなんですが、あきらはまだ17歳だし、成就するばかりがこの子の幸せなのかという気もしちゃうんですよね。
眉月 そう、応援しつつ心配するというか……あ、私も心配しながら描いてますね! 私自身、あきらへのこの感情はなんなんだろうと思ってたんです。告白シーンを描きながら「もう~」と思ってたあの気持ちは、「心配」だったんですねぇ。
──心配もトキメキの一種です!
眉月 トキメキで、胸アツで、胸キュンでもある(笑)。
──眉月先生がおっしゃった「17歳の女の子の生活を描く」というコンセプトからすると、「心配」はしっくりくるキーワードですね。俯瞰しながら共振するみたいな。
眉月 17歳って子どもと大人の間ですが、まだ思春期の不安定さもある。女の子が迷いながら模索する生活環境や、心情の変化を心配しながら見守ってほしいです。これが、少女マンガ誌だったら、もっとあきらの内面に共感させる描き方が必要なんでしょうね。今あらためて、これが青年誌ならではの落としどころなのかなと……。もちろん読み方はそれぞれなので、登場人物に感情移入してもらえるのもうれしいです。
──「このマンガがすごい!2016」ではオトコ編4位にみごとランクインしましたが……。
眉月 1位じゃないんだ〜と(笑)。
──狙ってました?
眉月 やっぱりランキングは上であるほどうれしいですよ。でも、「このマンガがすごい!」はデビューする前から読み手として参考にしていたので。そんな本に自分の作品が選ばれるなんて不思議な気持ちです。4位、ありがたいです!
──今後、描いてみたい作品の構想はありますか?
眉月 大人の女性を主役に描いてみたいとは思ってます。あと、ファンタジーを描いてみたい。一度も描いたことないですが……。そう、いい忘れましたが、小学生の時、『超獣伝説ゲシュタルト』(スクウェア・エニックス)をきっかけに、高河ゆん先生の作品にハマって単行本を集めまくったんです。
──高河ゆん先生は、かなり独創的な設定のファンタジー作品が多いですよね。
眉月 「こんな絵が描きたい」と思った最初の作家さんかもしれません。男性向けに描かれているようなのに、私のまわりでは女子のファンが多かったです。高河先生の絵は、女の子と男の子両方のハートをつかめる絵で、立ち位置的にも珍しい作家さんだと思います。男の子のキャラも女の子のキャラもきれいでかわいくて……アドレナリンが出る(笑)。当時真似しようとしたけど、無理でしたね。でも、今も足のラインや胸のラインを描くとき高河先生の絵を思い出すんです。特に、はるかみたいな巨乳の女の子を描く時は。
──ところで、『恋は雨上がりのように』の結末は決まっているんですか?
眉月 最終地点は初めから考えてあります。そこに至る間の道筋は、日々の編集さんとの打ち合わせでちょっとずつ変わりはしますが。
──それは、母体となった『羅生門』では描かれてないんですよね?
眉月 はい、短編の時点ではそこまで大きい物語ではなかったので。
──最近は、あきらの陸上部がらみのエピソードが増えてきましたね。第5集のラストでは、またまたあきらのことが心配になってしまう場面も! 最新第6集の見どころをご紹介ください。
眉月 第6集の見所は、第5集ラストで登場したみずきと、そこから動きだすあきらの陸上へ対する想い。さらには店長の元○○……など、様々なキャラが出てきて、ストーリーがふくらんできます。楽しんでいただけたら幸いです。そして、今回コミックスのオビが大変なことになっております! 人によっては単行本本体よりもオビのほうが価値があるのではといっても過言ではありません(笑)。どのようなオビになっているかはぜひ書店さんでご確認ください。ヒントは某特車二課の……よろしくお願い致します♡
『恋は雨上がりのように』 第6集
眉月じゅん 小学館 ¥552+税
(2016年10月12日発売)
あきらの恋と陸上へのの想いが少しずつ動きだし、それぞれの人間関係も変化する予兆が見えてきた『恋は雨上がりのように』。
あきらと店長が今後どうなっていくのか楽しみな最新単行本第6集は、10月12日より好評発売中! 「特車二課……」のオビも気になる!
まだの方は、前回のインタビュー第1弾もチェックして、より深く、余すところなく『恋は雨上がりのように』を楽しんでください!
取材・構成:粟生こずえ