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『ひとり暮らしの中学生』(松下幸市朗) ロングレビュー! 中学生になったリンに訪れた「優しさのバランス」のほころび。それでもけなげに生きる彼女と、それを見守る人々に癒される

2018/02/28


話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!

今回紹介するのは『ひとり暮らしの中学生』

『ひとり暮らしの中学生』
松下幸市朗 宝島社 ¥700+税
(2018年2月23日発売)


ハッピーエンドを迎えた『ひとり暮らしの小学生』から、『ひとり暮らしの中学生』へ。子どもが小学校を卒業して中学生になるように、マンガにも進学や進級があったっていい。

中学生になって制服を着たリン。ちょっと大人になったような気分だが、それは周囲の目も変わるということで……。

両親を事故でなくした女の子・鈴音リンが、江の島にある食堂をひとりで切り盛りしていく。
ありがちといえばありがち、王道といえば王道。そんな前作がありがちでなかったのは、「世界がヒロインにとって非情でもないが、特に優しくもなかった」ということ。

まず、食堂をひとりでやっていく系ヒロインに与えられている特殊能力「料理の腕がべらぼうにうまい」が、リンには授けられてない。
料理を作るのが「下手」であればうまくなるかもしれないが、リンは「下手」というより飛び抜けて甘いものが好き。
ご飯の上に生しらすを載せるだけの「しらす丼」にも、隠し味(隠れてない)の砂糖をたっぷりと入れる。それをお客が残して帰ったあと、リンは自分で食べて「おいしい」と一安心。味覚が個性的すぎて反省もできず、上達もできない子だ。

新メニューの「生クリームシラス丼」。その名前からしてあまりおいしくなさそう……。料理の腕は小学生から進歩していない様子です。

まわりの大人たちは、当時は小学生だったリンに優しかった。大家さんも「若者向けの味付けでこれはこれでよいんじゃろうな」と気を遣っていた……いや、そこはちゃんと指導してあげようよ。

単行本情報

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