話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『ひとり暮らしの中学生』
『ひとり暮らしの中学生』
松下幸市朗 宝島社 ¥700+税
(2018年2月23日発売)
ハッピーエンドを迎えた『ひとり暮らしの小学生』から、『ひとり暮らしの中学生』へ。子どもが小学校を卒業して中学生になるように、マンガにも進学や進級があったっていい。
両親を事故でなくした女の子・鈴音リンが、江の島にある食堂をひとりで切り盛りしていく。
ありがちといえばありがち、王道といえば王道。そんな前作がありがちでなかったのは、「世界がヒロインにとって非情でもないが、特に優しくもなかった」ということ。
まず、食堂をひとりでやっていく系ヒロインに与えられている特殊能力「料理の腕がべらぼうにうまい」が、リンには授けられてない。
料理を作るのが「下手」であればうまくなるかもしれないが、リンは「下手」というより飛び抜けて甘いものが好き。
ご飯の上に生しらすを載せるだけの「しらす丼」にも、隠し味(隠れてない)の砂糖をたっぷりと入れる。それをお客が残して帰ったあと、リンは自分で食べて「おいしい」と一安心。味覚が個性的すぎて反省もできず、上達もできない子だ。
まわりの大人たちは、当時は小学生だったリンに優しかった。大家さんも「若者向けの味付けでこれはこれでよいんじゃろうな」と気を遣っていた……いや、そこはちゃんと指導してあげようよ。