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『ふしぎの国のバード』(佐々大河)ロングレビュー! 文明開化まもない江戸(=東京)にドキドキワクワク……女流冒険家がみた美しいニッポン

2015/07/26


急進的欧化政策が日本文化の破壊につながると危惧する英国公使・パークスは、バードの冒険者としての実力に一縷の望みを託す。

急進的欧化政策が日本文化の破壊につながると危惧する英国公使・パークスは、バードの冒険者としての実力に一縷の望みを託す。

この第1巻では、横浜から東京、粕壁(現在の春日部市)、日光へと到る。
現在ではユネスコ世界遺産に登録されている日光東照宮を訪れたバードさんは、陽明門の壮麗さに興奮しきりだが、基本的に彼女は“わかりやすい”観光名所よりは、日々の生活や風俗・習慣に強く興味を抱くようだ。
市場や宿屋、駄菓子屋など、よそ行きではない素のままの明治日本の姿は、バードさんだけでなく、現代に生きる我々の目にも新鮮に映る。

また、そうしたものに接したときのバードさんは、先入観や西洋的価値観で判断するのではなく、できるだけ客観的に、科学的に分析しようとする。
「とにかく装備はその国の物を使うのが一番合理的なのよ」「この国の礼儀作法を破らないようにしなきゃ」といった明治日本へのリスペクトの姿勢も、読者の共感を呼ぶのではないだろうか。

日光東照宮にて。一日じゅう見ていても飽きないという陽明門を目の当たりにしたバード。この直後のリアクションは必見!!

日光東照宮にて。一日じゅう見ていても飽きないという陽明門を目の当たりにしたバード。この直後のリアクションは必見!!

とはいえ、かならずしも日本を手放しで礼賛しているわけではない。
日本人の物見高さや野次馬根性、生活習慣の違いに辟易する場面も。とりわけ蚤(ノミ)の大群に襲われるシーンはゾッとするだろうが、年配の方に話を聞くと、太平洋戦争後にGHQによってDDTが散布されるまでは、ちょっと田舎に行けばあんなものだったという。

時代劇や映画にも描かれないような、現代人からは想像がつかない“忘れられた日本”の姿が、本作には活写されているのだ。



<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama

単行本情報

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