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【ロングレビュー】ボク、“てきとう”でよかったー! “かんぺき”じゃないロボットとの暮らし。『ヤコとポコ』第1巻 水沢悦子

2014/07/09


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ヤコとポコの関係は、姉と弟のようだ。完成原稿をヤコが編集部に届ける間、決まってポコはおこづかいを握りしめて近くのゲーセンで待つ、そんな姿もほほえましい。ひとりで遊ぶときも、ポコはヤコを思っている。もぐらたたきの途中で高得点を狙わず、わざとハンマーを持つ手を止めたのは「残念賞」の文房具をもらうため。そのなかに、ヤコが集めているペンがあるかもしれないと思ったからなのだ。

作中に登場するゆっこさんというイラストレーターが作った思い出の色のペン。自分の思い出の色と一致すれば幸せになれるという。

作中に登場するゆっこさんというイラストレーターが作った思い出の色のペン。自分の思い出の色と一致すれば幸せになれるという。

“てきとうモード”で暮らす2人の生活は、ささやかだ。「あのペンが欲しいな」「もうちょっとこうだったらな」と思うことはある。しかし、そんなふうに――大きな欲ではない、具体的な「もうちょっと」を望んでいる暮らしは、とても豊かに思える。そして……好きな人、好かれたい人がそばにいる。ヤコとポコを見ていると、それだけで十分ではないかという想いが広がるのだ。

町の掲示板で見つけたゆっこペンを、自分の思い出の色と一致するか試すポコ。すぐには感情を見せないヤコだったが、このセリフには内心ニヤニヤ。

町の掲示板で見つけたゆっこペンを、自分の思い出の色と一致するか試すポコ。すぐには感情を見せないヤコだったが、このセリフには内心ニヤニヤ。

そういえば、この物語は近未来の設定だが、部分的には今より「ちょっと不便」なようだ。「昔のパソコンは一瞬で検索できたらしい」「しかも昔の人たちは電話やパソコンを持ち歩いていたらしい」と語る登場人物たちは、そんな時代はまるで想像できないといった顔だ。本作に漂うどこか懐かしくゆっくりして温かな雰囲気は、スマホのない時代ゆえのものか。
そこは真似できないにしても、私たちだって“てきとうモード”を取り入れてもいいかもしれない。

お疲れのみなさん、週に1日くらいポコになった気分で暮らしてみては?



『ヤコとポコ』著者の水沢悦子先生から、コメントをいただきました!

著者:水沢悦子

どうも。悦子です。

ロングレビュ~ありがとうございます。


ゆっこペンのきっかけになったのは

連載前にちょうどパイロットの

ハイテックCを集めていたことです。

「ハイテックCコレト」が発売になって

なんだか焦ったのを覚えています。


もう手に入らない色があったり

名前が違うのに色はほとんど同じヤツとかが

あっておもしろかったのです。


<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
「ド少女文庫」




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