そんな彼らが学園での訓練や様々な出会いを通じ、しだいにその能力を開花させていく様を丹念に描くのが本作。
メインの5人は成績向上を目的に「合宿」同然の生活を強いられており、序盤はコメディ(と言うか、いわゆるラッキースケベ的な)要素も多かったりはするのだが、チグハグだったメンバーが友情と信頼をはぐくんでいく過程はグッとくること間違いなし。
さらに天才エンジニアにして強い野心を持つアッシュフォード・クロウや軍部の人間たちの、複雑に絡みあう大人たちの思惑がガッツリと描写されているのも、マンガ版の見どころだ。
そして本作では教官の立場であったスズカゼが前線へと招集され、それに伴って侵略者・ウルガルの存在が明かされるなど、いよいよ「戦争」が現実味を帯び始めることで物語の流れは急加速。
単行本第9巻では、イズルたちの成長に呼応するように、直接攻撃を仕掛けてくるウルガルの軍勢によって学園は壊滅状態となり、第10巻からは本格的に宇宙を舞台とした展開へと突入している。
というように、非常に多く内包された要素を、じっくり煮つめるように描けるのはマンガ版ならではのアドバンテージなのだが、最新刊はここまでで凝縮されたエネルギーが一気に爆発するかのような、怒涛の展開の連続!
前巻の終盤より、イズルとアマネとの再会やシュメリアに似た「皇女」の登場、さらにシモン総司令官やチームドーベルマンたちアニメでおなじみのメンツとの本格クロスオーバーなど、キャラクター的にもにぎやかさをいっそう増していたが、最新刊では宇宙ステーション・スターローズにて勃発するテロにより、事態は一気に深刻化。
メインシステムをハッキングされ、すべての量産型機体が敵の手に落ちたなか、ワンオフ機体のチームドーベルマンと、イズルのファヌエル(マンガ版オリジナルの主人公専用機)のみが戦える状況へと追いこまれる。
そんな危機的状況に加え、そもそも宇宙での戦闘そのものが初体験というイズル。しかしアマネを守るために起こしたアクションをきっかけに、パイロットとしての才能を発揮していく姿には、「これぞ主人公!」というカッコよさが満ちあふれる。
当初は戦闘よりも煩悩爆発のオタ絵に才能を発揮し、やっとS級遺伝子が目覚めたかと思いきやPTSD発症でコクピットに座ることもままならず……といったイズルの苦難の道程を見守ってきた読者であれば、ここにきての彼の活躍ぶりに胸と目頭が熱くならざるを得ないだろう。
また、イズルの活躍とロボットバトルのみならず、S級遺伝子を持つ者同士の、いわゆる“異能バトル”も要注目。
なかでも特に目を引くのが、物語半ばでのコメディ要素かとも思われた「広報部」の部員、レイ・バレンタインだ。彼女がこれほどシリアスかつ重要キャラになろうとはだれが予想したであろうか? その彼女と反乱分子たちの関係、さらには「皇女」との出会いなど、大きな波乱を予感させる今後の展開に目が離せない。
ほかにも、それぞれの事情を抱える人々と、一時も予断を許さぬ緊迫した状況が錯綜するこの物語。
巻数としては11巻目と、それなりのボリュームとなってきた作品ではあるが、まだまだ壮大な物語の入口なのではないかとも思わせる。
続けて翌月に刊行予定の次巻とも合わせて、今後の展開を刮目して見守っていこう。
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。