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『このマンガがすごい! comics 北条早雲/豪談 後藤又兵衛』(永井豪・ダイナミックプロ)ロングレビュー! 戦国を生きた不世出の英雄たちがたどった一生を、永井豪率いるダイナミックプロが描く

2017/03/15


まずは大器晩成の代名詞的存在である戦国時代初期の武将を描いた『北条早雲』を紹介しよう。
家督争いに端を発した「応仁の乱」により荒れ果てた京の都。
略奪や強姦が横行するなか、伊勢新九郎(後の北条早雲)は暴漢に襲われていた姫を助ける。その後、新九郎は6人の同志とともに“真の武士の都”である鎌倉へ向かうことになる。

駿府でじつの妹(北川殿)と再会した新九郎は、甥の龍王丸(今川義元の父)が家督を継ぐ際に後見人となるが、この時点ですでに40代なかばになっていた。しかし、ここから年齢にみあわぬ大躍進をとげていく。

血縁関係にとらわれない実力社会を目ざして早雲は戦い続ける。

血縁関係にとらわれない実力社会を目ざして早雲は戦い続ける。

龍王丸の前に立ちはだかった小鹿範満(おしか・のりみつ)を討ちとり、韮山城主となって北条を名乗り始め、63歳にして小田原城を奪取、80代に入っても関東制覇の野望を絶やさない。
最後は難攻不落の新井城へ攻め入り、超巨漢のラスボス・三浦義意(みうら・よしおき)と大立ちまわりを演じることに。

随所に遊び心が満載で、「そんなバカな!?」と思う展開も多々あるが、「血縁なんてくだらない/実力だけがモノを言う世の先駆けに俺はなる!」と、老齢となっても最後まで暴れまわる早雲に、カーッと胸が熱くなる。
若い人はもちろん、アラフォー、アラフィフ世代はとくに勇気をもらえることうけあいです。

続く『豪談 後藤又兵衛』は、数多くの軍功をあげ、ロマンあふれるエピソードが語り継がれてきた豪傑の物語。昨年放送された大河ドラマ『真田丸』で、哀川翔がどろくさく演じたことで人気キャラクターとなったことも記憶に新しい。

物語は織田信長の中国征伐から始まる。
播磨(兵庫)・別所家の家臣の息子として誕生した後藤甚太郎(後の後藤又兵衛)は、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)・黒田官兵衛との戦いで囚われの身となる。
やがて甚太郎は黒田家の家臣となり、本能寺の変、朝鮮征伐、関ヶ原の乱を経験。時代に翻弄されながら大坂の陣へと突入していく。

人食い白虎と又兵衛のド迫力バトルは必見!

人食い白虎と又兵衛のド迫力バトルは必見!

講談を筆記した立川文庫(たつかわ・ぶんこ)をベースにしているので、朝鮮半島で人喰い虎と激烈なバトルを繰り広げるなどフィクションの見せ場もふんだん。エンタメ色は『北条早雲』以上に濃厚だ。
あくまでおもしろさ優先の豪ちゃん流であり、又兵衛出生の秘密など、ドギモを抜かされること必至です。

立派な体躯と底抜けに明るい性格で、名だたる武将たちをも虜にしてしまう魅惑的な人物・後藤又兵衛。そのすがすがしいまでのヒーロー像がたまらない。

両作品とも「歴史はちょっと苦手で~」とこぼしているアナタにこそ読んでほしい戦国絵巻だ。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。

単行本情報

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