複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう! マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう! それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「ついにGoogleがラピュタを開発!?」について。
『徳間アニメ絵本3 天空の城ラピュタ』
宮崎駿(原作) 徳間書店 ¥1,600+税
(1988年3月28日発売)
Googleがラピュタを開発したぞッ!
成層圏からインターネット通信用の電波を発信するプロジェクトの……といってもなんのことだかサッパリだッ!
要するに、太陽光と人工知能を駆使して永久的に活動し続ける気球が完成する、ということらしい。絵ヅラ的には「ふ号兵器」みたいだが、空中を漂い続ける無人要塞は、さながらジブリ映画『天空の城ラピュタ』のようだと話題になっている。
このGoogle気球の動力源は太陽光エネルギーだが、ラピュタといえば飛行石だ。飛行石とは、重力に逆らって物体を浮かせる性質を持った架空の石のことであり、古代のラピュタ人たちは飛行石を活用して天空の城を建造したのである。
気絶したシータが飛行石の放つ光に包まれて、ゆっくりと空から落ちてくるシーンは印象的である。石だけにストーンと落ちてくるわけだ。
さて、マンガの世界には飛行石に負けず劣らず、不思議な石がたくさん登場する。「賢者の石」(『鋼の錬金術師』荒川弘)や「やわらかい石」(『からくりサーカス』藤田和日郎)などが有名どころだが、今回は飛行石にかけて、「空を飛ぶ石」が出てくるマンガに限定して紹介していく。
さっそく始めるので、40秒で支度しなッ!
『大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史』
藤子・F・不二雄 小学館 ¥390+税
(1984年2月28日発売)
まずは『大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史』(藤子・F・不二雄)だ。
劇場版『ドラえもん』第2作目(1981年公開)の原作であり、2009年にはリメイク版の『ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史』も公開された。
コーヤコーヤ星の少年・ロップルが宇宙船で超空間に突入した際の事故で、ロップルの宇宙船とのび太の部屋がつながってしまう。地球からはるか遠く離れたコーヤコーヤ星とトカイトカイ星は地球より重力が低く、地球人であればのび太でさえスーパーマンのような力を発揮できる。のび太たちは頻繁にロップル側に遊びにいくが、やがてロップルたちの生活を守るために、大企業のガルタイト鉱業の横暴に立ち向かう。
このコーヤコーヤ星周辺の星には、反重力を発生させる「ガルタイト鉱」と呼ばれる石が存在し、ガルタイト鉱業はこの鉱石を独占的に採掘しようと企んでいる。
このガルタイト鉱を使うことで、空を飛ぶこともできるのだ。
『藤子不二雄Aブラックユーモア傑作選 マグリットの石』
藤子不二雄A 中央公論新社 ¥463+税
(2014年4月25日発売)
空を飛ぶ石といえば、『マグリットの石』(藤子不二雄A)を忘れてはならない。
主人公の陰間鏡二は予備校に通う受験生。ある日、書店の店頭でルネ・マグリットの画集を手に取ると、巨石が宙に浮いている絵(『ピレネーの城』)に魅了されてしまう。
『ピレネーの城』は1959年に制作されたマグリットの油彩画であり、海上に巨大な石が浮かんでいる絵だ。その巨石の上には城が建っているという、シュルレアリスムを代表する作品である。
陰間は手持ちの金がなく画集をあきらめたのだが、以来、寝ても覚めても巨石の絵が頭から離れない。ついには巨石の幻を見る始末。陰間はどうにかして画集を買おうとするが……。
ラストの「みんな……頭の上にマグリットの石をもっている」のモノローグが印象的な、藤子不二雄Aの名作短編である。
『新装版 寄生獣』第1巻
岩明均 講談社 ¥463+税
(2014年8月8日発売)
驚異的なスピードで空を飛ぶのは、『寄生獣』(岩明均)のミギーの投げる石だ。
主人公の泉新一は、右手に謎の寄生生物を宿すことになる。新一はこの寄生生物を「ミギー」と名付け、人間とパラサイトの奇妙な共生が始まる。
人間と寄生生物の対立が浮き彫りになるのは、島田との戦いからだ。新一よりひとつ上の学年に転入してきた島田は、新一の動向を観察するために送りこまれたパラサイト側のスパイのような役割を担っており、やがて学校内で大殺戮を始めることに。そこで新一は、島田を仕留めるために、遠距離から石を投げて〝狙撃〟する。ミギーが変形した新一の右手から投げ出された石は、なんと時速300キロの速度で空を飛んだのだ!
東海道新幹線がだいたい時速270キロなので、新幹線以上の速さということになるッ!!
ちなみに『ブラック・ジャック』(手塚治虫)には、走る新幹線に向けて男が石を蹴ると、新幹線に当たった石が跳ね返り、男の妻の腹部を直撃するという回(「震動」)がある。新幹線に向けて石を飛ばしてはいけないぞッ!
といったわけで、今回は「空を飛ぶ石」を特集してきた。
Google気球は飛行石で飛ぶわけではないが、すばらしい技術力で長期間にわたる航行を可能にしている。たゆまぬ努力と、なんとしても成し遂げようとする精神力が、この技術を生み出したのだろう。そう、ラピュタのように永久に空を飛び続けるためには、意志(石)を持つことが大事です。なんつって。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama