話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』
『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』 第4巻
要マジュロ(原作) 榊原宗々(漫画) 講談社 ¥429+税
(2017年3月17日発売)
昔の偉い人は「かわいさ余って憎さ百倍」、あるいは「食べちゃいたいくらい好き」といういい回しを発明しました。強い愛情はときとして「好き」という気持ちだけに収まりきらず、つい別の感情を引き起こしてしまうことも。しかし、だからといって好きな人に対して「死ね」って思うのはさすがにエスカレートしすぎじゃん。愛情が殺意に直結する奴なんて、メスのカマキリぐらいしかいないでしょ…………と思ったら、このマンガにたくさんいた!!
そういったわけで、今回は先日「グロテスクな恋愛に心が震える――“グロ恋”マンガ」ベスト10で第1位を獲得したダーク・サスペンス『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』を大特集! これまでの物語の流れと見どころをサクっと紹介していこう!
主人公である高校生の神城卓(かみしろ・たく)は学校内の清掃を趣味とする地味系男子。そんな彼は幼なじみの花園魅香(はなぞの・みか)に対し、ずっと密かな思いを抱いていた。しかし、陰キャラの自分と違って、魅香は学年中の男子から告白されまくるモテモテの美少女。このままではほかのだれかに彼女を取られてしまうと、神城はついに覚悟をキメて魅香を学校の屋上に呼び出し、想いの丈をぶつけた。
……違うんだ!
本当は普通に愛の告白をするはずだったのに、この前日に神城は夜道で女性を襲う不審者と接触したことによって、愛情が殺意に変わる症状“ID”に感染してしまったのだ。もちろん「好き」という想いは残っている。だがそれと同時に本能的な殺意が湧きあがってきてしまうのだ。
その結果、大好きなはずの魅香を、殺したくて殺したくてしょうがないという状況に。
このままでは彼女と一緒にいることはできない、と神城は彼女から離れることを決意する。好きな人のことを考えて身を引くのもひとつの愛のかたちだ。この状況が続けば殺人犯になっちゃうし……。
ところが、ここで問題が2つ。“ID”は感染するものなので、神城と同じ精神状態に陥っている人間は複数存在する。そして、魅香は超モテモテ。この2つが組みあわさった結果、魅香は学園中の感染者の殺意を一気に集めてしまうことに……。
かくして神城は魅香を守るために、彼女を中心とした殺意の渦に飛びこむ。