『アルテ』第2巻
大久保圭 徳間書店 \580+税
(2014年11月20日発売)
『アルテ』は大久保圭の初連載となる、ルネサンス時代を舞台にした画家の卵の物語。
16世紀初頭のフィレンツェで、独立心旺盛な貴族のお嬢様・アルテが、たったひとりで、画家・レオの工房に弟子入りする……。困難にめげない彼女の前向きな姿に、読んでいるこちらも元気が湧いてくる作品だ。
作者のあとがきによると、そもそも工房の職人を描こうと思ったきっかけは、漫画家やマンガアシスタントに似ていると、親近感を持ったからだそうだ。
そのためか、アルテの苦労にも実感がこもっている。それでいて生々しくならないのは、フィレンツェという舞台の華やかさがあるから。
1コマ1コマ、衣装のリボンからロウソク立てのような小物まで、丁寧に描かれた背景は、すてきな雰囲気を醸し出す。
歴史的に見ても、女性が画家になるのは簡単ではなかった。本作とは時が100年ほどずれるが、17世紀の女性画家、アルテミジア・ジェンティレスキの悲しい逸話が思い浮かぶ。
そうした歴史も、作者の頭の中には入っているのだろう。逆風や恋心をはねのけてアルテは成功を掴めるのか、今後も追いかけたい。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」(早川書房)でライトノベル評(ファンタジー)を連載中。
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