全3回にわたっておとどけした、ゆうきまさみ先生へのインタビューもついにラスト! 今回は、『白暮のクロニクル』と同時連載中、ゆうき先生がBLマンガを描いたと話題沸騰の漫画家マンガ『でぃす×こみ』について、お話をうかがいました! さらに先生が漫画家をつづけていくうえでのモットーとは!?
前編はコチラ!
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』インタビュー【前編】 画業30年を越えて初挑戦のミステリーは、計算しないで描いている!?
中編はコチラ!
ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』インタビュー【中編】 ラストはもう決まってる!? ゆうき流マンガ創作術に迫る!!
『白暮のクロニクル』と並行連載。まさかのBLで超話題の『でぃす×こみ』
――今、『白暮のクロニクル』と同時に『でぃす×こみ』も連載しています。
ゆうき こっちのほうが、企画自体は『白暮』より先に始まったんです。『でぃす×こみ』第1集のあとがきにも描いたんだけど、まだ『鉄腕バーディーEVOLUTION』の連載中に、現実逃避でポロッとアイデアを言ったの。その時は、当時の担当さんから「いいから『バーディー』やってください」と言われたんです。それが、『バーディー』終了後に次はなにをやろうか、って時に「アレ描けばいいじゃないですか」と言われて。「おぼえてたのかー」って思いましたよ。
――ゆうき先生が、BL(を題材にした作品)を描くということで、話題になってます。
ゆうき 担当さんに勧められて描くにあたって、「これ誰が喜ぶの?」って、ぼくは思ったの。「これ、ぼくが描くの?」みたいな、ね(笑)。どうなんだろうなぁー、色を塗ってくれた作家さんのファンが買ってくれるかなぁーとか、本当に恐る恐る描いてるの。そうしたら、思いのほか評判がいいみたいで。
――『でぃす×こみ』は各話冒頭の4ページが4色カラーで、これは単行本にも収録[注1]されていますが、毎回別の作家さんに色塗りをお願いしてるんですよね?
ゆうき そうですね、BLマンガのシーン3ページ分をお願いしてます。
――作中の登場人物が描いたマンガ、という体裁ですね。
ゆうき でも、結局のところぼくが描くので、別人が描いた作品のようにはならないんですよ。線では区別がつかない。で、どうしようかって時に、当時の担当さんが「じゃあ、塗りをほかの方にお願いしてみましょう」ってアイデアを出してくれたんです。
――なかなか斬新な試みですね。
ゆうき これがですねぇ、カラーリング会社とは違って、すでに漫画家として一家をなしている方々にお願いをするわけじゃないですか。
――はい。
ゆうき わずか3ページとはいえですね、渡した原稿を見た時に、こう……、「ぷっ」と笑われたらどうしよう、と(笑)
――いやいや(笑)
ゆうき なんかとにかく、笑われるような原稿にはできないわけです。
――漫画家の先輩として、原稿で威厳を示さなきゃならんわけですね。
ゆうき 「えー、これに塗るのー?」とか思われたらやだなー(笑)
――むしろ依頼された先生方が、「ゆうき先生の原稿に手を入れていいのだろうか?」って戦々恐々ですよ。
ゆうき だといいんですけどね。だからね、あんまり気楽なものではないんですよ(笑)
――みなさん特徴が出てておもしろいですよ。原稿はデジタルで?
ゆうき キャラクターはぼくがペンで入れてます。で、背景と仕上げはデジタル。そのあとデジタルデータで、各先生方にお渡ししてます。そこから先は、アナログで塗るか、デジタルで塗るかは、人それぞれ異なるみたいですね。
――今までとは違うファンがつきました?
ゆうき そんな気がしますねぇ。大阪でサイン会をやった時には、『白暮』や『でぃす×こみ』からぼくの作品を読み始めた、っていう若い方も来てくれましたから。やっぱりね、ぼくくらいの年齢になると、少しずつファンが減っていくわけですよ。
――えー、そんなことはないでしょう?
ゆうき いやぁ、少年誌で掲載している時とは違って、なかなか後続のファンが入ってきませんから。だから若いファンが入ってきてくれると、それはそれでうれしいですよ。
――『白暮』と『でぃす×こみ』を並行して連載していると、お互いに影響したりしま せんか?
ゆうき あ、いや、全然別のマンガなので、そういうことはないんですけども……、あのー、『でぃす×こみ』を描いていたら、『白暮』のほうにBL風味が浸食してきた、ってのはあります(笑)
――なんとなく需要がありそうですよ、竹之内と雪村とか。
ゆうき いやー、どうなんでしょうねぇ(笑)
- 注1 単行本にも収録 第1集は5話を収録。第1話は灰原薬(『SP』『応天の門』)、第2話は黒丸(『クロサギ』)、第3話は室井大資(『エバタのロック』『秋津』)、第4話はのりつけ雅春(『高校アフロ田中』などのアフロ田中シリーズ)、第5話はオノ・ナツメ(『子連れ同心』『ふたがしら』など)がそれぞれカラー彩色を担当した。いずれもカラーで単行本に収録されている。