サムネイル(=トップページに表示される、コンテンツを象徴する画像)を見て“あれ?……「この記事オンナ編なんじゃないの?」と思った方、ご安心ください。オトコ編です!
今月のランキングは、集計しながら何度も確認するぐらいの“異常事態”が発生しています。女の子が表紙をかざっている作品が多いこと多いこと。ここまで女の子がそろうのはちょっと珍しいですが、いろんなタイプのヒロインが見れるのもまた一興。
今回はひょっとすると、これまで読んだことがなかったどころか、ノーチェックだった作品ばかりだったという方も多いかもしれません。(特に男子!)
そんな皆さんにこそ、この機会にぜひとも読んでいただきたい作品群ですよー。
(2015年4月1日~4月30日発売作品を集計)
第1位(188ポイント)
『ランド』 山下和美
『ランド』
山下和美 講談社
農民・捨吉の妻・ルツは、その命と引きかえに双子を産む。「双子は不吉」と忌み嫌われているため、捨吉は凶相を持った双子の片割れ・アンを、生け贄として山へ置き去りにしてしまう。
そして8年後。成長したもうひとりの娘・杏は、村の葬列に加わって初めて村の外に出る。そこで杏は、謎の少年に出会い……。
“50歳になると人は必ず死を迎える”という一種の閉ざされた空間が持つ閉塞感と、常識に縛られない異端の存在がもたらす不安や希望を象徴的に描いた、『天才柳沢教授の生活』『不思議な少年』の山下和美の最新作。
新しい気宇壮大ドラマの誕生に、早くも期待の声が高まっています。
オススメボイス!
■「モーニング」の不定期連載『ランド』がついにリリース。しかも『不思議な少年』と同じ極厚版で読みごたえはバッチリです。和風のファンタジー作品ですが、その閉鎖された世界観にSFマンガの『ブレーメン5』を思い出しました。終盤の展開に『幻夢戦記レダ』も思い出しましたけど、自分もたいがい古いですね(笑)(いけさん/ブログ「いけさんフロムエル」管理人)
■この世とあの世、生と死、神と人、身分の高い者と低い者、といった関係や境界が、奇妙な因習の村を舞台に描かれる。独特の習俗やしきたりを持った村社会の世界観に引き込まれながら、その世界の足場がぐらつくような眩暈感にも襲われる(稲垣高広/ブログ「藤子不二雄ファンはここにいる」管理人)
■この作品は江戸か明治と思しき時代に生きる市井の村を舞台に、50歳が寿命(知命)であるという、姥捨て、楢山節考な世界が描かれている。江戸時代の丁髷、みなさまはあの髪型をどう捉えているだろうか。私は老人(先輩)を敬う価値観が形になったものだと考えている。この作品は、その逆だ。50歳は老いているどころか、元気であっても人知を超えた存在に対し逆らったものであり、知命と呼ばれる寿命を迎えたものなのである。強固な世界観で紡がれ、驚愕のSF的展開があり、これを収録するためにこの分厚さなのかと納得も。現代日本を批評する内容として、また想像を超えた1巻のラストを見て、ますます目の離せない作品である(今村方哉/レコード会社勤務)
■奔放な少女・杏によって、閉塞的な世界がみるみる開けていく。その疾走感と緊迫感にやられる(卯月鮎/書評家・ゲームコラムニスト)
■約360ページ(通常のコミックスの2冊分)の大ボリューム! それでも、“あの”第10話目までを1冊に収録して、以降の物語への「引き」にしたのは英断。閉じた世界の濃密さや狭苦しさと、一瞬にして視界が開ける感覚。自由を求める魂が揺さぶられる(加山竜司/フリーライター)
■因習に縛られた村で生きる少女の物語。何マンガかはっきり把握してしまう前に、まず1巻を手にとってすぐに読んでみてほしい作品(KT./漫画と装丁のブログ「良いコミック」管理人)
■その構えといい人物配置といい、今後のドラマのうねりを予想させて楽しみだ(辻真先/アニメ脚本家・ミステリ作家)
■山下和美の新境地。ナイト・シャマランの映画のような寓話性が高く謎めいた世界観がたまらない(永田希/書評家、マンガサロン『トリガー』店長)
「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ!!
第2位(98ポイント)
『ホクサイと飯さえあれば』 鈴木小波
『ホクサイと飯さえあれば』
鈴木小波 講談社
漫画家になる夢を抱いて上京したばかりの女子大生・山田文子(ブン)は、北千住にある家賃5万の古家でひとり暮らしを始める。
次々と運びこまれる家財道具のなか、さっそく悠悠自適なひとり暮らしを満喫……しようとしたのだが、なんと炊飯器がない! いきなりのピンチに彼女は、なんと空き缶でご飯を炊こうとする。
表題の「ホクサイ」は、彼女の相棒となるしゃべる(?)ぬいぐるみ。主人公のバイタリティと、ホクサイの軽妙なツッコミで展開する一風変わった食マンガが始まりました。
新しいブレイクの予感がします!
オススメボイス!
■大学入学でひとり暮らしを始めることになったブン。ちょっとだけごはんがおいしくなる方法と人生が楽しくなる方法が載っている良作(麻野昌三/わんだ~らんど なんば店店長)
■食べるために仕方なくではなく、作ることそのものが楽しいという料理の原点を感じる。ホクサイの存在感もいい味(卯月鮎/書評家・ゲームコラムニスト)
■売っているものでも自分で作れば、もっとおいしくなる。作っている時間もおいしさへの楽しい時間。自家製マヨネーズとても作りたくなりました!(太田和成/あゆみBOOKS五反田店 コミック担当)
■毎日のご飯に一工夫。なければ料理、あっても料理! かけた手間もおいしくいただける、現代人が忘れがちなゆとりある食事に憧れます(杉山陽一/COMIC ZIN 秋葉原店 コミックバイヤー)
■「KADOKAWA」から出た同名マンガの過去編です。ここから、ブンがどんなふうに成長して漫画家になっていくのか楽しみですね(種村理沙/「KYTIMKYM」管理人)
■かつて連載していた作品『ホクサイと飯』のプレストーリーにあたる。わりと実戦向きのレシピが役に立ってうれしいかぎり。しかしなによりタイトルが絶妙じゃないですか!(富士見大/編集・ライター)
「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ!!
第3位(86ポイント)
『水色の部屋』 ゴトウユキコ
『水色の部屋』
ゴトウユキコ 太田出版
クラスでも浮いている内気な高校生・柄本正文は、若く美しい母親・沙帆と2人暮らし。彼は幼いころにレイプされる母親を見て以来、沙帆に対して道ならぬ欲望を抱いている。
そんななか、正文のクラスメイト・河野洋平に幼なじみの三好京子を紹介したことから、3人そして沙帆をも巻きこんで微妙な関係ができ始める。
2月の「このマンガがすごい!WEB」ランキングオトコ編で第1位に輝いた上巻に引き続き、完結巻もランクイン。はてさて、その読後感は……?
オススメボイス!
■まるで1本の映画を見たような興奮と余韻。生あたたかい温度や湿度や匂いや重みまで漂ってくるような、生々しく繊細な描写がすばらしい。ロマンポルノやATGの名作を思い出した。人間の感情と言動の矛盾、屈折した愛の交錯が愛おしい(井口啓子/文化系ライター)
■息詰まるような母親との蜜な感覚と記憶の描写においてすばらしい作家だとあらためて感服させられた作品であった。この作品、作家が女性なんだが、男では逆に描けないおそろしいストーリーテリングで、いったいこの拡げた風呂敷をどうまとめるのかと注目の作品でもあった。主人公はいけすかない同級生から自身の母親にとんでもないことをされる。止められなかった。不埒ともいえる受け止め方をしてしまった罪と罰の物語であり、日常からいきなり狂気の果てまで描ききった作品だと感じる。人生の残酷さを思い知ることができる作品ともいえるだろう。どちらかというと主人公のまーちゃんではなく、その母親の心理描写にリアルさを感じた作品でもあった(今村方哉/レコード会社勤務)
■怒濤の上巻から衝撃の下巻へ。深すぎる母への気持ちがどこへ向かうのか注目です!(太田和成/あゆみBOOKS五反田店 コミック担当)
■完結……とはいえ、最後までモヤモヤさせられっぱなしだった(富士見大/編集・ライター)
「日刊マンガガイド」でのご紹介は、コチラ!!