『白泉社文庫 綿の国星』第1巻
大島弓子 白泉社 ¥590+税
8月31日は漫画家・大島弓子の誕生日。
萩尾望都・山岸凉子・竹宮惠子と並ぶ、言わずと知れた「24年組」の代表的作家である。
普段、大島弓子の作品で読むべきものを尋ねられれば、導入として『大島弓子選集』という1冊430ページ前後からなる単行本全16巻シリーズの読破を進言するところだが、作品単位でということであれば、もっとも作品に寄り添う時間が長くなるよう、78年から87年にかけて不定期連載された最大の長期シリーズ『綿の国星』を挙げておきたい。
「少女」というキーワードで語られることの多い大島だが、本作では主人公を生後間もない猫(チビ猫)にすることで、少女性をまといつつもさらに、人間社会をながめるイノセントな他者という視点をより強くはらむことになる。
また猫を擬人化して描くという、マンガにおける「猫耳少女キャラ」の源流としても位置づけられる作品だ。
手塚治虫『リボンの騎士』のヘケートに起源を見るなど諸説あるとはいえ、本作における「チビ猫」の圧倒的なかわいらしさと人気が、のちの拡散に強く影響しているだろうことは間違いない。
本作の原型となったであろう『いちご物語』や、続編である『ちびねこ』もあわせて読み返すことで、現代サブカルチャーの歴史の一端を紐解いてみてほしい。
<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」