日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『飯カレ』
『飯カレ』第1巻
日向なつお 講談社 ¥429+税
(2015年11月13日発売)
人間、体が資本ですからね。ごはんは食べんといかん。
そこで『飯カレ』。ごはんをいっしょに食べるカレ=「飯カレ」。
アチチな2人でごはんでも、という「恋→食事」の方程式をひっくり返して、「食事→淡い想い」。〝あなたと食べるごはんはおいしい″から始まる関係。
「おいしい」を2人で分けあうなかで、愛とも恋とも名づけられない、ふわふわした気持ちがゆっくり育っていく感じ。
わ~お、くすぐったい。そして、超うらやましい!
ふき味噌、おにぎり、カレー……っていうメニューは、恋の始めに食べるものとしては地味。
だけど、「飯カレ」と食べたい普通の日のごはんとしては、百点満点。だって、おしゃれなものを食べることよりも、おいしいごはんを食べることが大事なんだもの。
そう、わけあいたいのは「おいしいね」。
2人でドキドキするのは、もう少しだけあとにとっておこうよ、とでも言いたげな物語の余白にキュンキュンしちゃいます。
いっしょにごはんを食べたい人がいるってことは、こんなにも毎日を楽しくするんだなとしみじみ。大人になるってことは、家族以外に、いっしょにごはんを食べたい人を見つけることなのかも、とも思ったり。
1話完結のオムニバス形式だから、1巻だけで8人の「飯カレ」に出会えちゃいますよ。み~んな味わい深いけれど、イチオシは「稲荷寿司」に登場する「飯カレ」。
縁側で思い出話をしながらお昼ごはん……というシチュエーションもたまりません。
ほかにも、コワモテ男子と公園でスイーツとか、放っとけないお隣さんとお家でカレーとか、印象的なお話しばかり。さぁ「飯カレ」の魅力、存分にご堪能くださいませ。
<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。