日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『恋だの愛だの』
『恋だの愛だの』 第11巻
辻田りり子 白泉社 ¥429+税
(※「辻」は実際の表記では1点しんにょう)
(2016年7月5日発売)
“傍観者”であることをやめて、クラスのなかに飛びこんでいこう……こんな決意とともに始まった、苗床(なえどこ)かのこのハイスクール青春物語は本巻で完結!
かのこが変わろうと思いたったきっかけのひとりである、中学時代からの友人・椿がついに告白を。
悩んだあげくにかのこが選んだ“返事”とは!?
“高校デビュー”というテーマの少女マンガは数多い。
しかし、本作は主人公が外見は特に変わらない眼鏡女子のまま、内面的にかわいくなろうとする軸を貫き通しているのが特徴的。
頭がよくて、とにかく論理的。それゆえに他人を分析できてしまい、自分は人の輪から一歩ひいてしまう。だけど、決して不遜ではなく自分の評価にも公平なところが、かのこの魅力だ。
正直でフラット。ブレない、媚びない、感情的にならない。
「あはっ」「クスッ」ではなく……「ニタ〜」「イヒヒ」と笑うヒロインもいいじゃない!!
恋という感情からは縁遠かったかのこが、高校生活での人間的成長を経て、その新しいテーマにどんなふうに向きあったか。それも、じつにかのこらしくてほほえましい。
かのこの中3時代を描いた、本作の前日譚『笑うかのこ様』(全3巻)を振り返ると、彼女の変化のほどが感慨深い。
未読の方は……あえて『恋だの愛だの』を先に、後から『笑うかの子様』を読むのも一興かも。
<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
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