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【インタビュー】 小説も書いていたけど…? 『虹の娘』『あれがいいこれがいい』 いがわうみこ 【後編】

2014/06/02


デビュー単行本『あれがいいこれがいい』と次作『虹の娘』が同時ランクインするという、「このマンガがすごい!」史上初の快挙を成し遂げた、期待の新鋭、いがわうみこ先生。

インタビュー後編では、漫画家を志すようになった動機や、デビューまでの経緯、影響を受けた作品など、さらに深く、いがわ先生のパーソナリティに迫ってみました。

(前編は→コチラ

著者:いがわうみこ

2011年に「FEEL YOUNG」(祥伝社)で漫画家デビュー。2013年、初単行本『あれがいいこれがいい』を発表。続けて同年、短編集『虹の娘』と連載作「青の糸 赤の三角 白い夢」を改題した『さよならまたこんど』を刊行、注目を集める。
現在は「FEEL YOUNG」にて『ちぇみと三兄弟』を連載中。

創作以外のことを仕事にするのは……

――いがわ先生は、いつ頃からマンガ家を目指していたんですか?

いがわ 小学生の頃には、なんとなく漫画家になりたいなと思っていました。でも、そんなにがっちりと描いていたわけではないです。いちおう、Gペンとかは使っていたけど。

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――読者としては、どんなマンガを読んでいましたか?

いがわ 王道ですね。幼稚園から小学校低学年くらいまで「りぼん」「なかよし」「ちゃお」で、その後は「マーガレット」系の学園ものが中心になっていきました。週刊少年誌も読んでましたね。でも、中2あたりで、全然マンガを読まなくなっちゃったんですよ。

――何かあったんですか?

いがわ 単純な話、現実の学生生活のほうが楽しくて。あと、ちょうど進路を考える年頃ということもあって、漫画家を目指すなんて無謀だな、と思いはじめた頃でもありました。

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――じゃあ、いったんは描き手としても読み手としても、マンガを離れたわけですね。

いがわ そうですね。高校時代はマンガではなく、小説をよく読んでました。そして……もともと文章を書くのもすごく好きだったこともあって、マンガから離れ始めた時期に、小説を書くようになったんです。

――それは納得です。いがわ先生のマンガの余韻って、小説みたいな行間の読ませかたがあると思っていたので。

いがわ 高校生の時は山田詠美さんの小説がすごく好きで。そのときの感覚にぴったり合ってたんだと思います。一番繰り返し読んだのは『蝶々の纏足』[注4]ですね。

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――女子高校生が主人公で、恋愛描写もありつつ、女の子2人の心のせめぎあいがテーマになっている小説ですね。ちょっと背伸びした10代の雰囲気もドキドキさせるものがあって。当時、いがわ先生が書いていた小説も、この世界観に近かったんですか?

いがわ あまり……女子高生が主人公というところだけは同じですが、主人公はたいていやる気がなくてアンニュイな感じで(笑)。

――どのくらいのペースで執筆していたんですか?

いがわ 深く考えて書いていたわけではないんですけど、短編を月に1~2本くらいは書いていたんじゃないかな。

――その頃は漫画家ではなく、小説家を目指そうと思っていたんですか?

いがわ そうではなかったです。あくまで小説は趣味で、あふれる感情をひたすら垂れ流す感じ。そうこうするうちに、また高校卒業後の進路を考えなければならなくなって……ここでまた漫画家が浮上してくるんです(笑)。

――どういう思考の流れですか!?

いがわ 興味がないこと以外は本当にやりたくない人間で……そして将来を考えた時、創作以外のことを仕事にするのは、いやだなと思って。

――創作の仕事として、小説ではなく、しばらく離れていたマンガを選んだのはなぜなんでしょうか。

いがわ 絵をかくこと、話を考えることの、両方が好きだったからかな。それが組み合わさっているのがマンガだから……。

学園恋愛ものでデビューを目指していました

――初投稿は何歳の時でしたか?

いがわ 19歳です。少女マンガ誌に、学園恋愛ものの少女マンガを描いて持っていっていたんですが……苦しんでましたね。あとから思うと、読み手として好きなマンガと、描けるマンガが一致するとは限らなかったんです。「好き」と「合う」は違うなって。

――しばらくは、学園恋愛ものの方向でがんばってはいたんですね。

いがわ いちおう、担当さんもついてくれていたので……。停滞しきっているのに、ここでがんばるのがデビューの近道だと思って、ずっとその方向性のものを描いていました。でも、ある漫画家の先生が「この雑誌には合わないから、ほかにいったほうがいい。あなたは絶対にデビューできるよ」とはっきり言ってくださったんです。どうしようか悩んでいたのが、その一言で吹っ切れました。

――その言葉が背中を押してくれたんですね。

いがわ そうですね。その後、投稿先をいくつかの女性マンガ誌に絞って、そのなかのひとつだった「FEEL YOUNG」に持ち込んだんです。

担当編集 今まで持ち込みに来られた方々のなかでも、(作品の)レベルは格段に高かったですよ。なぜ今までデビューしてなかったんだろう……と思ったくらい。

――持ち込みしてからデビューまでどれくらいかかりましたか?

いがわ 半年くらい。ネームを出しては修正の日々でしたが、その半年間は幸せな時間でしたね。それまでは、描いても描いても結果が出ず、自分に自信がなくなる一方だったんです。でも、ちゃんと目指す方向がわかっていて、実のある修行をしていると実感できましたから。

――初めて自分のマンガが雑誌に載った時の感慨はいかがでしたか?

いがわ 誌面で見ると、自分の原稿は汚いなあ、と。こんなんじゃイヤだ、と思いました。

――漫画家になれたという実感を得たのは?

いがわ コンスタントに掲載されるようになって、マンガ一本で生活できてるなと思った時。単行本が出たことは大きいですね。それからまわりにも、ちゃんと漫画家だと言えるようになりました。

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  • [注4]『蝶々の纏足』 1986年、小説家・漫画家の山田詠美が「文藝」(河出書房新社)に発表した小説。少女の成長を描いた物語で、同年下半期の芥川賞の候補にもあがった。

単行本情報

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