日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『戦国自衛隊』
『戦国自衛隊』 第4巻
森秀樹(画) 半村良(作) リイド社 ¥602+税
(2017年4月28日発売)
本作『戦国自衛隊』は、映画にもなった半村良の同名小説を下敷きにしている。
映画『戦国自衛隊』は70年代末から80年代にかけての角川映画ブームを牽引したヒット作だ。
そして作画を手がける森秀樹は、白土三平→小島剛夕→森秀樹と続く劇画界の保守本流ともいうべきベテラン作家であり、『墨攻』や『新・子連れ狼』などの代表作がある。
あの『戦国自衛隊』を、あの森秀樹が手がける……!
そんなドリームタッグによる本作が、ついに最終巻を迎えた。
さて、本作は半村良の小説(および映画)を原作としているが、物語の展開は完全に独自路線。
“自衛隊が戦国時代にタイムスリップしたら”という基本設定以外は、ほぼオリジナルの物語を展開していった。
そもそも原作小説や映画は、1979年の自衛隊が川中島の戦いの直前にタイムスリップし、伊庭三尉率いる部隊は長尾景虎(上杉謙信)に協力。
京への上洛を目指すことになる。
しかし作中に織田信長は登場せず、歴史において信長の果たした役割を自衛隊が代行するという、歴史の収斂作用が働くところが物語上のキーポイントとなった。
ところが本作は、2013年の自衛隊が本能寺の変の直前にタイプスリップ。
伊庭三尉は織田信長と出会い、彼を救出することで大きく歴史に関与していく。
なお、森秀樹版の織田信長はチャールズ・ブロンソンそっくり。「うーんマンダム」と、ブロンソンがかつて出演していたCMのパロディとなるセリフを多用する。
物語冒頭、なんの説明もなく恐竜(ヴェロキラプトル)が戦国時代に出現するのも本作の特徴だ。
ラプトルとは、映画『ジュラシック・ワールド』(2015年)で主役のオーウェン(クリス・プラット)が手懐け、背中に乗っていた種類の恐竜である。
なんの因果か、白亜紀から戦国時代へとタイムスリップしてしまったラプトルが、やはり現代から戦国時代へとタイムスリップした自衛隊と出会い、そして武士道へと目覚める。
最終第4巻では、近代兵器の所有権を巡り、伊庭三尉率いる自衛隊と信長が対立。
自衛隊とラプトルは織田軍と戦うことになり、その合戦が佳境に入っていく。
はたして伊庭三尉率いる自衛隊の運命やいかに!?
原作を知っていても、まったく先の展開が読めない森秀樹版『戦国自衛隊』。
劇画の御大が、じつに楽しみながら描いているバイブスが誌面から伝わってくるのが、なんとも心地よい。
あらためてマンガの持つ可能性、自由度の高さを認識させてくれる作品である。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
Twitter:@1976Kayama